幕間
白ウサギは困ったように眉を下げ、床に倒れたリンゴの彼女を見下ろしていた。
ドロドロと床に流れ落ちる彼女の中身。白ウサギは靴が汚れることを気にすることなくそれを踏みつけてリンゴの彼女の頭上に立った。

「困ります。ほんとうに。あぁ…僕のアリスに傷を付けるなんて!」

「でも、ええ。ふふっ。とっても素敵な表情おかおが見られたから、いいとしようか」
「貴方を喜ばせるためにやったのではないのだけれど。とっとと消えてくださらない?」

白ウサギの周りをくるくると、ヘンテコに回り続ける懐中時計。逆さに回る針の奥には、小さな少女アリスの姿が映り込む。
パチン。白ウサギは時計をつかまえて、ポケットに大事に大事にしまい込んだ。

「台本通りに出来ないなんて、やっぱり貴女は未熟ですっぱい青リンゴだ」

冷たい顔をした白ウサギが手をかざすと、何もないところに真っ黒な大きな穴が開いていく。

「エンドロールが来るまで、舞台裏でおやすみなさい」