皆が皆、ずっと篭りきりでバランス栄養食やパウチのゼリー飲料、良くてカップ麺と言う食生活を見兼ねた上司に、交代でご飯を食べて、少し仮眠して来るように、と先輩と共に仕事場を追い出されてしまえば従う他ない。
先ずは第一陣の風見と神戸の二人だった。
この職場なら誰しも、下着やシャツの替えをデスクの影に幾つか隠している。神戸は、ジッパー付きのビニール袋にショーツはショーツ、靴下は靴下、と一回分毎に小分けにしてリュックに纏めて入れている。脱いだ汚れ物をそのまま入れて密封出来る為だ。汚れ物は別のリュックに詰めて数日置きに家かコインランドリーで洗う。
着替えをデスク影から引っ張り出して、ショルダーバッグの底に押し込んで財布やハンドタオルを乗せてチャックを閉めて、風見と神戸は時間差で警視庁を出た。
示し合わせた訳では無いが、手っ取り早くシャワーを浴びて着替えて一時間程の仮眠をとるのに最適な、所謂ラブホの前でかち合うだろうなと二人共考えていた。
其れなのに何故か、二人はどう見ても合コンの場に連れて来られていた。
二人共人数合わせだった。昨日着替えたとは言っても、徹夜続きで化粧もしていない神戸は、そこに居た風見の側をさりげなく陣取った。
自己紹介からねー!と言われて、飛田と名乗った風見同様に、神戸は小野と名乗った。
二人して隅っこで、誰かが口をつけたものだけを食べていた。正直、公安御用達の喫茶店でナポリタンとサンドイッチを食べたかった神戸も、公安御用達の喫茶店でチョコレートサンデーだけでも食べたかった風見も、ある程度腹が膨れたら仮眠とシャワーの時間があるウチに抜け出す気で居た。
「ノリ悪いぞ、かz…飛田ー、飲んでるか?」
「いや、この後一度警視庁へ戻るから飲めないんだ」
「メシのつもりだもんな、おまえ。でも人数合わせとは言え、ちゃんと女の子捕まえてんのな!」
「いや、俺は…」
「小野ちゃんだっけ?この堅物の何処が良かったのー?」
「お互いに人数合わせの様でしたので、それだけですよ」
「…小野ちゃん怒ってる?ごめぇん、でももう帰るだけなら飲めば良いじゃん?」
「いえいえ、これ休憩なので。ああ、30分経ってる。もう戻りましょう、先輩」
「ああ、そうだな。まさか我々が騙し討ちに合うとはな」
「上に叱責されますね、今から気が重い」
「仕方ないさ。久々の顔に絆されるなと言う事だな」