ボタンはスペード海賊団の元戦闘員である。海風で少し傷んだ少し癖のある黒髪を腰まで伸ばし、女だてらにエースと同等かそれ以上かと言うほどに強かった。
旅の上では知識も豊富でいつでもクルー達は頼りにしていた。しかし白ひげの本船が女の戦闘員を乗せない事を聞かされ、聞いた話だとして「ん?昔は違ったはずだが……」とこぼしつつも渋々、彼女は船を降りて行った。デュースから見れば、戦闘でも頭脳でも敵わない部分が多くて悔しいと思ったことだってあった。それでもボタンは仲間だった。まさか袂を分つことになろうとは、その時まで思ったことすら無かった。
それから半年ほど経った頃だろうか、エースの義弟の一味に男の赤子を抱えたボタンが居ると……新聞で知ったエースは、青ざめていた。
新しい手配書には黒い癖毛の赤ちゃんを片手で抱えて、それでも変わらず剣を振るう姿が載っていた。それを見た元スペードはもちろん、白ひげもエースの子、だと頭に過った。
「エース、自分の女なら……なぜそう言わねェ……?」
「……ちが、いや違わねェけど……ボタンは、おれの女だけど、船での役目は戦闘員だった。言う必要はねェってアイツに言われた……隣で戦えねェなら、イヤだって……」
あのジンベエや白ひげとの激突の時にボタンが積極的に戦いに行かなかったのは、腹の子を気遣っていたからだ。
「おれとの戦いに突っ込んで来なかったのは……子がいたからか……あの時に気付いてやれねェで、悪かったなァ、エース……」
白ひげは脳裏に、もうこの世に居ない兄弟分を思い出していた。
「いや、アイツは……それでもここには、残らなかったんじゃねェかって思ってる……ボタンの親代わりの爺さんに自分が『白ひげが嫌いなタイプの女』だって聞いてたらしいからな……」
白ひげを含めて、周りは首を傾げた。
「そりゃどういう意味だよい……?」
「……性格がおでん?ってヤツとリンリンってヤツを足してめんどくさがりにしたらボタンだって」
おでん、その言葉に白ひげとその古株達は息をのむ。リンリンは、一度置いておく。
「……おでん……だと?」
久々に聞く名に白ひげが思わずその名を呟いていた。
「ああ、おでんってェのは、食いもんじゃなくて!ボタンの死んだ父ちゃんだって聞いてる!」
そりゃあ、おでんの性格もリンリンの性格も仲間にするには面倒なのは白ひげには良くわかる。しかしおでんの娘となれば話は別だった。
「あの……ボタンなのか?この船で産まれた、あの……」
「さすがに覚えちゃいねェ……んだろうなァ……」
この白ひげとその古株達の反応に驚いたのは、デュース達だった。
「えええ!!?ボタンが、この船で産まれた?!!」
「ああ……だが、ボタンは両親に連れられ、ロジャーの船に移った。まァ、そっちの方が記憶にゃ、あるかも知れねェなァ……」
「え!!!!?海賊王!!!??」
再びの白ひげの爆弾発言にデュース達が叫んだ。
「そういやァ……アイツ、育ての親に全部聞いたって言ってたな」
「そういえば、その育ての親って言うのは……どこの誰だ?」
衝撃のあまり発言できずにいたイゾウはようやく疑問を口に出せた。
「レイリーって爺さんだ」
エースはレイリーに会ってシャボンディ諸島を発った。ボタンと過ごして、話をしてきた中でロジャーへの蟠りは、本来より和らいでいると言える。だから、レイリーとも会ってちゃんと話せていた。
「そうか……。おれァ……ボタンが生きてたことを……知れて良かった」