1/ボタンが10歳でシモツキ村に辿り着いていた場合

ワの国編時
主人公29歳、ゾロ21歳の8歳差

時系列
0歳 モビーで生まれる
3歳 オーロに移動、ワの国に行く
4歳 おでん帰
8歳 シモツキ村でゾロ誕生
9歳 ワの国から逃げ延びる
10歳 東の海 シモツキ村に偶然辿り着く(ゾロは2歳)(凪の帯を越えた)
コウシロウの一心道場で世話になる
17歳 村から旅立つ(ゾロは9歳)
18歳 ボタンが知らないところでくいなが亡くなる(ゾロ10歳、くいな11歳)
ゾロやくいな達の、姉のような存在だった


くいなは、ああ言っていたがボタンは強い。それを踏まえてもコウシロウは、偉大なる航路で名を轟かせていた光月おでんの娘であるからだろう、とも思っていたので、甘い夢を見るくらいなら厳しい事を言った方が良い。そう判断していた。

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 ロロノア・ゾロには姉のような人がいた。血の繋がりはないが、互いに孤児で村の剣術道場に世話になっていた。ゾロの同年代の皆に姉ちゃんと呼ばれて慕われていた。村の大人達とは少し違う二刀流の使い手で、くいなにだって勝つ人だった。ゾロ自身も手合わせしたことはある。一本だって取れなかった。
 そんな“姉ちゃん”は17歳になると村を出て行った。「武者修行に行ってくる!」そう言って更なる強者を求めて出て行った。元気でやっているらしいのはニュース・クーの運ぶ新聞に挟まった手配書で知っていた。

 疾風のボタン 4100万ベリー

 初めての手配書のバウンティは、東の海らしからぬ額だった。何をしたんだ、と村人は驚いていた。

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 とりあえずは、と東の海をめぐる中でボタンは様々な島に行った。その中で未だアーロンが支配していないココヤシ村に辿り着いた事もあった。
 豊かとは言えないが、貧しくもない……そんなのどかで良い村だった。その時のボタンはただ、目的の為の武者修行のつもりでしかなかった事もあって、ただの旅人として少しだけの滞在だった。
 消耗品を補充しに寄った村で出会ったのは気の良い村人達と、後に泥棒猫と二つ名がつけられる少女の家族達だった。駐在であるゲンゾウに、村の話を聞いていたところに万引きでナミが突き出される……と言う出会いではあったが。
「ん、美味しいじゃあないの、このみかん……売ってちょうだい」
 そう大きな船ではないから、一箱のみではあったが、ベルメールのみかんを気に入ったボタンは船出の時に貰う約束をして、代金を先に払うほどだった。
「代金はみかんを渡す時で良いのに」
「やれやれ、私が気に入ったの。日持ちしないから沢山持って行けないのが残念だわ」
 毎日でも食べたい美味しさだわ、と言うボタンにナミとノジコは、ちょっと嫌そうな顔をした。
「本当に毎日だと、飽きちゃうんだから!」
「そうよ!」
 そんな2人に拳骨で叱るベルメールにボタンは良い家族だと思っていた。
 1週間ほどの滞在でココヤシ村を離れ、小ぶりな船は東の海を巡る。

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 最弱の海と呼ばれる東の海でも海賊も山賊もギャングも存在している。だから、刀を2振り携えていようと、女のひとり旅は狙われない訳がなかった。だから襲われて返り討ちにして、金品を巻き上げることでボタンは船旅を続けていた。
 しかし想定よりも襲ってくる連中の数が多くなってきたと感じているボタンは、少々面倒くさくなって来ていた。金も財宝も物資も足りている。偉大なる航路に入るには大きな船が必要ではあるし、なんなら目標の為に仲間だって本当は欲しい。そのために金品は集めて来た。しかしそろそろ船が財宝で沈みそうなのだ。換金もして軽くしたのに、である。
 ボタンは困っていた。もう少し大きな船が欲しい、と。集めた情報では、シロップ村と言う村が、この辺りではソレなりの造船所のある島らしい。そこの病弱なお嬢様と執事が2人に数人の使用人がいる御屋敷の、亡くなった夫婦が本来の社長だったらしい。そこの羊みたいな髪をしたメリーと言う執事に依頼し、製作済みで引き渡しがオジャンになったと言う今よりは大きめの船を入手して、旅を再開した。滞在はたったの半日だった。

 それからも海賊たちを返り討ちにし続けて、またひとつの村へ辿り着く。そこには大きな風車があった。
 文字通りにフーシャ村にある酒場に行くと、ボタンと歳の近いだろう女性が柔らかい声で出迎えた。そこには客であろう黒髪の少年もいた。
「こんにちは、食事をしたいのだけれど……」
「いらっしゃいませ!お好きな席にどうぞ」
 遠慮なくカウンター席に着いた。
「坊や、キミはよく来るの?」
「うん!おれはルフィ!坊やでもキミでもねぇ」
「そう……悪かったわ。じゃあ、ルフィのオススメのメシは何かある?」
「ぜんぶ!マキノのメシは、なんでもうめぇ!でもおれは、肉が好きだぞ!」
「あはは!そうか、分かった……ありがとう」
 いつも来ている常連に聞くのがいちばん、そう知っているボタンが、すぐ近くにいる少年曰く……何でも美味しいらしい。
「じゃあ、ルフィが食べてるやつお願いできる?飲み物はお茶があれば欲しい」
「ふふ、はい!」
 注文をして料理を待つ間、ルフィが人懐っこくボタンに話しかけた。
「なあなあ、海賊なのか?」
「違うわ……でもねお父さんが海賊だったのよ。だから海賊船の上で生まれて……3歳くらいの時に、お母さんが体調を崩したことでお母さんと一緒に船を降りたのよ」
「へえ、オマエは海賊やらねェのか?」
「私はどっちでもいいわ。お父さんが見た世界を見てまわるのが夢なのよ……」
 
「はい、お待ちどう様!」
 美味しそうなステーキと付け合わせに丸いパンがカウンターに置かれた。
「ありがとう。いただきます!」
 手を合わせてナイフとフォークを手に取った。
「うまァ……!」
 空腹もあったのだが、良い塩梅の味付けに硬すぎず臭くない肉……長閑な田舎町のバーで出されるものとしては、美味。それでいてお値段だってマトモに高すぎることもない。もう少し金取れるぞ!と言いたくなるが、この町での相場を知らないボタンは、ただ食事に集中した。