主要メンバー以外の警官に転生者が多過ぎる。

私は極普通の筈の警察官だ。評価して頂けたらしく23歳で警視庁公安部に配属されて、公安として鍛えられた後、潜入中の諸伏先輩の補佐と繋ぎ役に抜擢された。一応はキャリアだが、現場経験に重きを置く為に、そうなったらしい。
そして諸伏さんとの顔合わせの後直ぐに、上からの私への指示に疑問が浮かび、自力で調べていた。幸いな事に前世はクラッカーだった。しっかりがっつり其のスキルを活用して掴んだ情報を、諸伏さんに渡して、1番信用出来る人は誰か聞いた。私に接触出来る範囲だと、風見さんだと言われて、USBに纏めた情報を登庁した時に、差し入れに混ぜてさりげなく渡した。
其れから直ぐに私や諸伏さんの上司が秘密裏に逮捕された。何故か滅茶苦茶色んな人に感謝と激励を貰った。初めての経験に、私は首を傾げるだけだった。

次の日、登庁したら警視庁公安部の数少ない女である数名に女子トイレに連れ込まれた。殺されるのかと思った。
老若が口々に言う言葉に浮かぶクエスチョンマークの山。拉致があかない。
「私、風見さんの上司とか、その同期とか知りません……じゃあ、そう言う訳なんで、そろそろ失礼します。」
「待って。、未だ話は終わってないわ」
開放はされなかったね。イラッとして来たが、グッと押さえ込んで通常通りに対応する。
「本当に何のことだか分からないんですよ?さあ、仕事の山が私を待っているので、失礼しますね。」
言外にお前らにも仕事あるでしょ!と言ったつもりだったが、響かないらしい。
「じゃあ、何も知らずに救済を?すごいわ……」
そんな感動と畏怖の入り混じった様な視線はやめてほしい。怖いから。
「あのね、私達は名字さんと同じ転生者なの……他にも大勢居る。色々と探った結果では、原作やアニメ、映画に居た名前有りの人たち以外の30%が、同じみたいなの。数世代前から続いている現象らしくて……だけど、」
「ホォー、つまりは「今まで誰も救済出来なかった」と言いたい訳だ。ではこれ以上は私に何も伝えるべきでは無いでしょう?」
「な!どうして?効率が、」
「全く、其れで良く公安部が務まりますね?つまり、知らない私は出来て、情報が有り上手く行くはずのアナタ達には出来ない……シュレディンガーの猫とでも言えば良いのか?結果を知って終えば、其れを覆せなくなるのでは?……そう言う事ですよ。」
捲し立てる様に言って、彼女たちを振り切って仕事に戻った。

***

転生者、そう彼女らは名乗った。
確かに私には前世の記憶と言うものが存在している。そのまた前世も。けれど私の記憶には風見さんの上司だとか言う人と会った事も無ければ、その人の同期と言う方々との面識も無い。まあ、彼女達が風見さんの上司と、上司の同期についての情報を名前も年齢すらも明かさなかったと言う事は、浮ついて居ようとも、一応警察官である事を忘れて居ないらしい。

しかし彼女達は、私達の事を分かっては居ないらしい。何しろ彼女達の言う前世は私にとっては、もう一つ前だ。私の前世は、ジャッジマスターと言う任に就いていた。特高……いや、どちらかと言えばチェーカーか。チェーカーの様に内部には腐った奴も居た。前世で同僚だった者の内一人と再会し、記憶の有無を確認し合い、それぞれがどんな道へ進もうとも、以前で言うならばソリドール、ひいてはアルケイディアの為にと誓った其れを、今度は今の生まれた国の為に、とたった二人で誓い合った。其れがどちらも、警察官として同期になるとは思いも寄らなかったが、悪くは無い。

***

再会した知己ちきは、仕事に関してと、その内の正義が、この世の情理に反して居ないと言える者ばだったのは、幸いと言えよう。そうで無ければ、この世界の我らが国の為として、捕らえねばならなかった。我らは互いの実力をよく知っている故に、他の者には任せられないのである。
新人として各所に配属された我らは、世代がズレてさえ居れば、二人ともキャリアだったと言われているけれど、其れは難しいだろう。第一に私はキャリアと言う身分を隠すよう言われている為に、我らで唯一のキャリアとして扱われるザルガバースもとい、砂川龍三さがわりゅうぞうに始めは首を傾げられたが、こちらが何らかの事情が有ると既に察してくれており、その立場にきっちり立って居る。正直言って有り難い。苦労人タイプだと知っては居たが、今回も変わらぬらしい。

ザルガバース以外の前世関係者は、見かけた事が無い。居ないとは思えないのだが、今日まで探しても見つからぬと言う事は、存在していないのか、世代が異なっているのか、むしろ国が違う可能性も有るだろう。良い方に期待はしない。存在したとて味方だとは限らぬのだから。



先日の事から、風見さんとの付き合い方はただの先輩では無く、クラッキング等で得た情報を渡す先の一人として、今までの差し入れだけでは無く、飲み物にコーラがある時はデータ入りのUSBやSDカードが有ると言う印にして、やり取りを行う様になっていた。

その内、情報の入った記録媒体の受け渡しを風見さんに依頼された。時折くれていた私への差し入れに、私向けの情報ならばコーラ、受け渡し用のデータならばビタミンドリンクが添えられる事になった。何もない時は緑茶である。
配達時間は午前中なら当日から次の日まで、午後の場合は当日から三日以内と初めから決まっていて、配達先は安室透だ。彼が誰なのかは当然だが教えられて居ない。調べれば分かる自信は有るが、彼の安全のためには情報を持つ人間は少ない方が良いのだろう。その中でも分かるのは、彼は潜入中の公安の誰かである事だけだ。其れが分かっていれば問題など無い。情報を渡す際に風見さんへの情報を預かる日も有る。
その内、風見さんからの指示で、安室さんからの情報を受け取り風見さんへ渡す為に安室さんと連絡を取り合う様になった。良く会うと言う関係性を誤魔化す為だけに、偽装戸籍にて婚姻関係であると装い、化粧と声色を変え、服装もタイプを変える事で変装した。
外では、安室透の妻である安室名前であると振る舞い、とあるマンションを隣同士で一部繋げて、安室夫婦としての出入り口を統一してあり、私が隣室へ移って、変装を解いて出て行く時には名字名前と言う手段を用いた。

そうして仕事に邁進し続けている内に、安室さんがポアロと言う喫茶店のバイト兼毛利小五郎の弟子の探偵と言う設定になった。
ポアロには情報の受け渡しでしか行かないけれど、食事も飲み物も美味しい為、ちょっと楽しみだったりした。


2020/07/09