穴熊と蛇 1

親世代
転生
ヒロインは祖母が日本人
ハッフルパフ寮
ファミリーネーム固定
セブルス落ち
オリキャラ有り

***

ナマエは少し落ち込んでいる。
祖母の故郷である日本の魔法学校に行きたいとずっと言っていたのにも関わらず、行かせて貰えなかった。日本で生活していないのだから、当然なのかも知れない。流石に前世が日本人だから行きたいんだとは言えない為、祖母を理由にしたけれど、やはり無理だった。結局は当初の予定通り、家で両親や家庭教師に魔法の勉強を教わっている。
母に「11歳になったらホグワーツに行けるからね」と言われても、この時はホグワーツでは無くマホートコロが魅力的に写っていた。けれどマホートコロは6歳からの入学で新学期は4月の為、もう間に合わない。今は1月でナマエは7歳になるのだから。

落ち込んでいても、家庭教師からの課題も両親からの課題も無くなりはしない。魔法だけでは無く、家系的に好んでいない筈のマグルについてもマグルの歴史や道具について等の事まで習うのは、何故か?
Muggle-bornマグル生まれでも Half-Blood混血でも無く、 Muggleマグルと駆け落ちした親戚が居る為、そう言った事が起きない様にと言う理由の様だ。恐らくはマグルの非道な歴史を学ばせて自ら関わりたく無いと思わせたいのだろう。両親の会話の端々を掻い摘んで、そう結論付けた。聖28族には書かれていないけれど一応は純血家系らしいから、一人娘のナマエに大叔父の娘さんの様に駆け落ちされたく無いんだなと、察せられた。

そんなナマエのファミリーネームがプリンスだと知った時、ナマエは驚いた。そのファミリーネームには聞き覚えと見覚えが有る。
ナマエが敬愛するセブルス・スネイプ教授の母のファミリーネームがプリンスだった。つまりは駆け落ちした親戚と言うのは恐らくは教授のお母様の事では?と即座に考えた。未だ子供のナマエには確かめる術さえ無い為、確定では無いけれど、教授の親戚かも知れないって事である。だったら、教授の幼少期の困窮してるだろう様子や精神的にも宜しいとは言えない生活環境は、何とかならんだろうかと、ナマエは思った。
ナマエの生まれは1960年だから、セブルス達の年代と同じ。私は何不自由無く暮らしているのに、セブルスがそんな環境で生きている言う事が、せっかく生きているのに、何も出来ない事が、辛い。そう思っていた。

落ち込んでいたその日も、考えは廻り、セブルスの事を考えていた。

−−−何も出来ないなら、せめて痛みや苦しみを私が肩代わり出来たら良いのに。

***

夢を見ていた。男の人が怒鳴り女の人が殴られて、最終的に自分が殴られる夢。そこでナマエは男の子だった。恐怖と痛みで泣き叫んで飛び起きた。これがセブルスの今だと何故かナマエは確信していた。涙があふれて止まらなかった。この恐怖と痛みをセブルスが感じているのだと思うと、苦しくてナマエは初めて大声を上げて泣いた。

「お嬢様が!旦那様!」

異常を感じたハウスエルフのプーカがナマエの父レナードを呼んだ。
こんな事は初めてで、これから寝ようと言うところだったレナードとナマエの母フローレンスは、プーカに呼ばれるままに大急ぎで娘の寝室へ向かった。

今までに無い程に泣く娘に戸惑いながらも、優しく「何があったの?」とフローレンスが問い掛ける。
途切れ途切れの言葉を繋ぎ合わせれば「狭い場所で男性が女性と男の子を怒鳴って、暴力を振るっていた。自分はその男の子の中から見ていた。」と言う夢を見ていたのだと言う。
泣き止まないナマエを慰めていたフローレンスは、驚き息をのんだ。
「レオ、これを見てください。」
袖口から覗く、白く細い腕には真新しい痣が複数あったのだ。フローレンスが捲ったシルクの淡いブルーのネグリジェの下の肌も、同じ様に青痣が幾つか広がっていた。
「何という事だ!夢と連動している怪我とは……この子には歳の近い親族など居ないと言うのに。」
極めて稀な事だが、パートナーや家族を想う気持ちが、対象の危機を感じ取り、ヴィジョンを見る事が有る。その想いが強ければ、怪我や病すら自身に転移させる程の魔法が発動し得る。だが、ナマエには歳の近い親族も居なければ婚約者も居ない。(*)
だが、歳の近い親族と言う言葉にフローレンスが目を見開いた。
「まさか!レオ、もしかしたら、あなたの従姪じゅうてい(叔父の娘)に子供が居るのかも知れませんわ。」
「アイリーンに?確かに有り得ん事では無いな。だが、今は其れよりもナマエに Draught of Peaceドラフト・オブ・ピースを飲ませなければ…。」
「ええ、そうね。」
ドラフト・オブ・ピース(**)は不安や動揺を和らげるポーションであり、副作用として強い眠気が有る。けれどその副作用も含めて利用する者が多い。今回のレナードも、そのつもりでこの白いポーションを選んだ。

薬品庫からポーションの入ったクリスタル・ボトルを魔法で取り出したレナードがボトルを良く振って、ベッドの側に膝をついた。
「ナマエ、ポーションだよ。これを飲めば楽になる。」
「はい、お父様。」
杖を振って取り出したショットグラスにポーションを半分程注ぎ、多少は落ち着いたナマエに差し出せば、まだ微かに震える手でグラスを受け取り口をつけ、飲み干した。
直ぐに目蓋が下りてくる。数分のうちに寝息を立て始めたのを確認し、レナードはフローレンスを伴いナマエの寝室から静かに退室した。

家屋がいつも通りの静けさを取り戻した中で、一抹の不安を抱えたフローレンスとレナードは二人話し合い、出来る限り早く従姪の様子を見に行くべきだと結論付けた。

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2020/05/08
(*)オリジナル設定
(**)邦訳版-安らぎの水薬