DCの世界に転生して絶望してたら、別作品の最推しに出会った。

タイトル通りです。

私には前世と言うモノの記憶が有る。その記憶の中では、この世界は探偵と事件に溢れた世界だった。しかも、作品の舞台である東都の米花町に居なければ良いかと言えば、そうではない。ニュースでは東北だろうが関西だろうが九州だろうが、関係無く、事件が起きては探偵が解決している様子を確認出来た。
小学生にならないうちから、テレビのニュースをじっと見ていた私は、そういう時事ニュースと言うか探偵が好きだと思われていた。でも本当はファンタジーやSFの方が遥かに好きだし、何ならこの世界じゃあなくって、そっちに生まれたかった。しかもこの世界には、何故かトールキン作品は無い。嘘だと思って必死に探したが、無い。既に放映されている筈だと思って探したスタートレックも影も形も無い。所謂エルフ語もクリンゴン語も、ちょっとした会話ならできるレベルに覚えた程のフリークな私には、この世界は厳しい。ああ、スランドゥイル様の話がもう読めないだなんて!

私の最推し作品ハリポタの原語版がリアタイで読みたいあまりにイギリス英語なら、ばっちりになるよう努力してきた。だが私が大人になった頃には発売の筈である原語版を心待ちには出来ない。既にトールキン作品もスタートレックも無い上に、他の様々な推し作品が存在しないと分かっている。
英語を学び始めた頃には、こんな事になるなんて思いもしなかったと言うか、まさかこの世界が、某探偵漫画の世界だとは思っていなかった。
探偵が幅を利かせるこの世界は、探偵が活躍するミステリー作品が山のようにある。時代劇ですらミステリー調だ。もう探偵ストーリーはお腹一杯なのに探偵ばっかり。二次元でもリアルでも探偵まみれで食傷気味なのだが、世の中の皆はそれで良いらしい。訳がわからん!
それでも自分のオタクとしての性分が、萌(燃)えられるモノを探し求めている故に、諦めきれずに海外の出版物もチェックを欠かさなかった。最終的に、SFもファンタジーも凄く小規模な世界であると分かってしまい、私が語学に堪能に成らざるを得ないと言う事態になったが、今では役立っているので問題は無い。

どう役立てているのかと言えば、フィールドワークである。少しでも連休が有れば、親の金でイギリスなどの海外に行っては伝承の妖精や怪物、植物を探したり聞き取り調査を行ったのだ。当然だが国内でもフィールドワークをしている。どちらも写真を撮ったり、インタヴューを録音したりして、しっかり記録し、家に帰ればレポートを書き綴る。レポートは過去に大学生だった事もあるので、一応ちゃんとした物を書いている。完全なる趣味だが、もう楽しくてたまらん。


この時も、いつもの様にイギリスに来ていた。今回は母の付き合いのため、思い切りフィールドワーク出来ないのが残念だが、じっくりとキングズクロス駅を堪能出来るのだと思うことにした。
ちょっと気になる事が有った私は母がその辺りの店に引っかかっている内に、セントパンクラス駅を探して、いつもの感覚で歩き回った。(後で色々言われるが、まあその時はその時。申し訳ないけれども、これは変わらないと思う。)撮影の外観はセントパンクラス駅を使い、それ以外は大体キングスクロス駅を使った筈だ。其れなのに、キングスクロス駅の外観が映画と同じだったのである。世界が違うとこう言うところもズレが生じるのかも知れない。
−−−やっぱり入れ替わってる。不思議だわー。
思う存分眺めて、ふとチャリングクロス・レーンへ向かった。作中で本来ならリーキー・コールドロン(漏れ鍋)の有る通りだ。1時間も歩けば辿り着くけれど、どこに有るのか当然分かるはずもなかった。残念に思いつつ振り返って冷や汗が出た。

−−−あ、やばい。迷ったわ、これ。
手元の時計では未だ余裕が有るが、それは迷っていなければと言う前提での時間だ。少し見渡していると、どう見ても私の最推しにしか見えない人が居た。ただし凄く若いと言うか、私よりそこそこ年上に見えた。14歳前後じゃなかろうか?結構ちぐはぐな組み合わせのマグルの衣服を着ているのも、原作っぽくて素敵だわ。ダボついた大人用のサイズだろうシャツにジャケット、くるぶし丈になっている寸足らずのボトム。靴もボロいし痩せている。髪はベタついて見える上に肩にかかる長さ。まさしくホグワーツの3、4年生のProfessor.S.Sですと紹介されたら、納得しちゃうわ。ギュウッとちょっと苦しいくらいのトキメキが私をおそった。
「すみません、キングスクロス駅への道を教えて下さい。」
思いっきり聞いたわ。今を逃したら後悔するわよ!と心の中の私が囁いたのだからしょうがない。
「……キングスクロス駅はここから歩いたら1時間程かかるが大丈夫なのか?」
「はい、ここまで歩いて来たので、なんとかなります。」
「は?良くやる事だ。」
呆れられていると分かるが、もうそんな事どうでも良い。そっくりさんだろうが御親戚だろうが話しているってだけでテンションフォルテッシモなのである。
「歩くのは慣れているので、問題有りませんでしたよ。」
「……そう言う事では…はあ、地図を書いてやる。」
やった!直筆のメモが入手出来る!それしか考えていなかった。鞄から分厚いスケッチブックと、鉛筆を取り出し手渡せば、S.S(仮)氏はさらさらと地図を書いてくれた。
「有り難うございます!」
スケッチブックを受け取る時、パラパラと捲れて私の今までのフィールドワークで書いて来たスケッチを見られた。さすがに恥ずかしくて慌てて閉じた。
「待て。今のはミシマサイコでは?」
なんで知ってるんだ?日本にしか自生してない生薬なのに……しかも一瞬で。
「ええ、セリ科のミシマサイコです。よくご存知ですね!すごいなあ。」
正直な気持ちだった。ポーション作りに特化してる訳じゃあ無くて、材料の事にも当然の様に詳しいんだ!
「あ、いや、まあ、こう言うハーブに興味があるんだ。それで偶然知っていただけだ。」
そうよね、魔法の事は私みたいなマグルには言えないもの。誤魔化すしか無いに決まっている。追求せんとこ。いや、ハリポタとは限らないけど。

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2020/05/10