01.一度目の転生


後から思えば一度目の転生だったのだが、この時の私は、そんな事も知らずに一番目の人生と全く違う人生を、懸命に生きようとしていた。
友人達と武者修行っぽい旅をしたり、部族の長の娘としての修行も厳しくつけて貰った。
そうして比較的平和に生きていた私達の世界は、ある日を境に大きく変化した。
強大な闇の怪物と、其れ等と戦う為に現れた光の戦士達。
私達の世界を壊す怪物と戦う為に、私を含めて幾人もの戦える者達が、光の戦士と一体化して戦った。私達は光であり人だった為、彼らとの親和性も高かった。

けれど、私達の故郷は怪獣達に悉く破壊された。残った七人で何とか戦っていたけれど、いつしか四人が闇に堕ちてしまう。
仲間だった男がユザレの導きで光側へ戻った事で、闇に呑まれていた私達は、光の戦士の本当の強さを引き出せずに封印された。当たり前だろうと後に思った。我々は本来なら光だったのだから。

三千万年、海の底で意識だけは有った。だから、その間ずっと考える時間だけは有った。
良く考える内に、割と早めに一度目の生を思い出した。動けない石像状態では無かったら、きっと頭を抱えていただろう。

私は闇に負けた。そして三千万年経ち、私達の封じられたルルイエが浮上した。
これだけ経ち、一度目の生を思い出した私は既にかつてのティガに思い入れはあれど、妄執する程でも無い。
調査としてルルイエに乗り込んで来ていた、この時代の人間達を揶揄(からか)う様子の無いヒュドラとダーラムに、もしや、と内心期待した。人間を揶揄うつもりは無さそうだが、私を庇う様にしてくれている。こいつらが闇のままだったなら共に朽ちてやろうかと言う程度の情は有る。どうしたものかな、と人間の様子を見ていれば、あの女性隊長が声を掛けてきた。
「あなた達は一体……」
「ふふふ、私達を運び出してどうしようとしたのか気になるけど、それどころじゃないのよねぇ」
さすがに私が自分を保てている今の状態でデモンゾーアが生まれる事は無いだろうが、ガタノゾーアの怨念が怨霊翼獣シビトゾイガーを呼び寄せている気配がする。
「同族の血を引く者よ、今すぐに他の人間を連れて逃げろ。ガタノゾーアの怨念が怨霊の怪物達を呼んでいる」
ヒュドラがこう言うのだから、もう堕ちる事は無いだろうと踏んで行動する事にした。
「しかし、あなた達は……?」
「ねえ、あなたに頼みたい事も有るの。ティガに会えたら、コレを渡してくれる?」
一度人の姿をとり、白いスパークレンスをユザレの子孫に手渡す。
「ティガは俺の友だった。共に戦えるなら俺は嬉しいが、無理にとは言わん」
ダーラムとティガは親友だった。けれど既に今のティガは、私達の知るティガじゃあ無いと分かっている。それも有って、絶対に連れて来いよと強く言う気は無いのだろう。
「行くわよ、ダーラム、ヒュドラ……」

シビトゾイガーの群れと戦い続けてどれ程の時が経っただろうか。気付けば三人とも満身創痍になっていた。
ああ、こうやって戦い続けて私達は闇に誘われてしまったんだ。けれど、光であり人である私達が屈せば残るはティガただ一人。
ティガは強いから、私達が居なくとも何とかしてくれそうに思ってしまう。でも、一人きりより仲間が居た方がマシだと分かっている。

信じられ無い事に、ガタノゾーアの怨念がシビトゾイガーを取り込みデモンゾーアが生まれてしまった。私が居なくても生まれるものだったとは思っていなかった。
結局のところ、私達はデモンゾーアに敵う訳も無く地に伏した。そこに現れたティガに最後の力を託して、この生を終えた。

次があるのなら、もう闇に呑まれたりしないで……みんなで生きられたら良いな、なんて。

2019/11/18


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