第五話 共に歩む fin.


「分かった様な事を言うな!」

歩み寄りを見せたジードを拒絶し、ベリアルは光線を放つ。今更、和解してしまうなど出来よう筈もない。
光線の撃ち合いとなり、親子二人は全力で撃ち込んだ。経験の差、消耗、それらを考慮しても本来ならベリアルの光線はジードを瞬殺出来ただろう。だがベリアルの光線は徐々に押され、遂にはジードの光線が直撃する。

ベリアルはジードの名を叫び、消えた。

「さよなら……ーーーーーーー」

ーーありがとう、リク。さよなら。


何故、アリルが自分の母として選ばれたのか、リクは知った時からずっと考えていた。相性とは何なのか。
きっと其れは、アリルがウルトラマンに親和性の高い精神だったからだろうと結論付けた。残された記録などから、アリルに相性の良いウルトラマンが憑依したら一年後には場合によるが、憑依が解けないかもしれないとゼロが証言した。魂が一般的な場合より、何倍も早く融合してしまうかもしれない、と。けれど、其れすら受け入れる精神の持ち主だろうとライハは言った。


私の中にはベリアルが存在している。もう少しで私と言う自我は薄れるだろう。けれど、彼と唯一、融合して彼がウルトラマンとして、他の星でも生きやすくなる。凄く幸せな事だ。彼と二度と離れずに済み、彼の役に立てる。こんなに嬉しく思うのは生まれて初めてかもしれない程に心が弾んでいた。
けれど、ベリアルにとっては、私との完全なる融合は避けたい事らしい。薄らと残る私の意識だけでは足りないのだと彼は言う。共に生きて行きたいのだと。
異次元に追放されて、ベリアルは必死に意識を深く沈め、融合を遅らせようとした。私は遙かな時を暗黒に晒されて生きていた。薄らと感じるベリアルの想い、願い、そう言ったモノを感じて、私は自我を保っていた。確かに、これだけでは寂しいものがある。とベリアルの完全なる融合を拒む気持ちも分かってきた頃、私達は暖かく、けれど強烈な光に導かれるように掬い上げられた。気が付けば光の国のウルトラマン達に助けられていたのだ。
長い時だと私は感じたが、たったの一年程だったらしい。私達の融合は進んでいたけれど、ベリアルの拒否から、本来程では無いのだと言われた。そして何より私とベリアルの融合していた分だけで、初めは彼らに、私が地球人だと分からない程の変化だった為、光の国の強烈な光を受け続けていたと言う要因の重なりによって、私は私としてベリアルはベリアルとして、分離しつつも、精神は他の誰よりも繋がっていると言う、奇跡的な状態と成っていた。
ベリアルの望み通りの結果だと、私には分かっている。だから怖くは無い。侵食され過ぎていたはずのベリアルも黒い色が半分に減って、目は違うけれど、なんだかジードのプリミティブに良く似ていた。
私は、結構なツリ目でシルバーを多めにしたジードにそっくりなカラーだった。つまりはジードは私に似ているのだろうか?いや、これは、私がベリアルと八割程、融合していた結果だろう。家族みんなそっくりで、繋がりを感じられて嬉しかった。その想いが伝わったらしいベリアルがガシガシと荒っぽく私の頭を撫でるのは、照れ隠しだって私には伝わる。
共に生きるってこんなに幸せなんだ。こんな状態でジードも授かれたら、本当は良かったんだろう。今のジードには共に歩む仲間達が居るのが私にとっての救いだった。

私達は完全に許された訳では無い。ベリアル曰く、私の存在があるから半分くらい許されているだけで、いわゆる執行猶予状態なんだろうとの事だった。そう言った制度がある訳じゃ無いけれど、そんなものだろうと。
ちょこちょこと様子見として監視役に誰かしらが来るけれど、総じて私の心配をしてくれる事実が、ベリアルのしでかしてきた事の大きさを如実に感じさせた。

私達は様子見がてら、特に怪獣も侵略宇宙人も現れて居ないらしいマルチバースの地球で、しばらく暮らす事になった。

喧騒、鳥の囀り、人の営みが生み出す音、匂い、色。其れを共に感じられる喜びに、愛する者と生きる喜びが合わさり、幸せだと思った。
全て、共に出来るとは思った事も無い事ばかりだ。けれど望んでいた事だ。
幸せを噛み締めて、日々を過ごしていられる。生きているだけで、幸せだと思えた。

fin.


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