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その中でナツが立っていたのは、よりによってその最前線だった。ヒーローショーの真っ只中、ただの1人のファンとしてその遊園地に来ていたのだ。覚悟がいる、ナツはそう言った側であった。
子ども達の声援を受けて戦うウルトラマン達の姿、それだけで泣いちゃうくらいには、ウルトラマンが好きなナツは、今日もファンとして後ろの方で興奮して汗だくになりながら、ヒーローショーを見ていた。
ーーー今日も心が洗われるなあー。コレで明日からも彼らを目標に生きていける!
誰かの為に生きよう、それはナツの幼い頃からの目標だった。それが無ければ生きる意味が分からないくらいには、ウルトラマンは人生の指標だった。
その日常は、この日、なくなった。
「うそだろ……なんでバット星人が……」
轟音とともに現れたのはファンなら分かるであろうバット星人だった。現実にそんなものが現れて、それが何か分かる者は一瞬で考えを巡らせた。
これでウルトラマンが近いうちに来てくれなければ……終わりだろう。この世界の軍事力が科特隊に及ばないことは大人になればよく分かる。彼らの世界は、初代ウルトラマンの頃から半端なく進んだ技術があった。この世界には、そんな技術もなければ当のウルトラマンも存在していない。
あるのはウルトラマンと怪獣が好きなトクサツファンの想いだけだった。
しかし、ウルトラマンを愛する老若男女問わないファン層の厚さと展開されるソフビ人形やグッズ、映画やテレビシリーズ作品、それらを見たバット星人は、ウルトラマンがココに来た事があるに違いないと判断した。
このM78スペースとは異なるマルチバースの我らが地球では、ウルトラマンを創作上の存在として愛している。
現れたバット星人を見た子供たちは、この宇宙には実在しないウルトラマンに助けを求めた。
そのバット星人の要求は、ウルトラマンを差し出せ、だった。それが伝わった途端にウルトラマンを大声で呼ぶ事を控える子供が増えていった。そう、こういう時にウルトラマンを差し出すなんて……そう、テレビシリーズを見ていた子供も大体の大人も思った。ここまでウルトラシリーズに出た異星人が言うのなら、どこかに居るのかもしれない、とも。
その動きにバット星人は、いないはずのウルトラマンを庇うはずがないと、ウルトラマンが居ると確信を持って、地球上で怪獣を暴れさせ始めた。
ナツを始めとした本気のファンは、この子供たちの言動に心が締め付けられた。
ーーー私(俺)(僕)が、何とかできないだろうか。
その想いで、分断されゆく各地で、互いに知る術も無いまま小規模の自警団としての防衛隊が結成されていった。
少しずつ甚振るように各地で起きる怪獣の襲撃から、子供達を逃すことが第一だとして、大人は必死だった。ある日、ナツは一人の子供が瓦礫の隙間に足を挟まれ逃げ切れないと判断し、気を失った子供に上着を被せて怪獣へ向かって走った。無謀だと分かっていたが、ここから先には通してはいけない。ここで私が諦めたらいけない!それだけの想いで怪獣に飛び掛かって、吹き飛ばされた。何度も繰り返しているうちに、気がつくと見知らぬ光に包まれた空間に立っていた。
ーーーここは……私はどうなったの?
辺りを見渡しても、それは知らない場所だった。荒れた知らない場所と言うような様相のそこで立ち尽くすナツを強烈な光が覆った。
「何だ……これ……力が……!」
ハッと手のひらを見る。そこにあったのは、いつもの肌ではなく銀色の手のひらだった。
「ウルトラ……マン……の力?」
身体を見回せばネクサス、いや……ノアようなエナジーコア、全体的に輝くシルバーカラーが目に入る。
「なんで?」
まるでアンファンスのような姿だった。
2024/09/01 up
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