03-面接


真島建設の入社面接は東京の神室町、西公園跡地、神室町ヒルズ建設現場のプレハブ小屋でやるらしい。
まとめて面接すると西田さんと言う方に電話で言われ、揃って神室町へ向かった。
名前が連れて来たのは、大学を出てから、前の職場が二箇所目だった犬飼、中卒で未成年者の太田原、高卒で今年やっとハタチの矢野の3人だ。

「ここの様やな。」

「斑目さん、ほんまにプレハブ小屋くらいしか、事務所みたいな場所あらへんねんな。」
不安らしい犬飼が小さく言った。
「新規立ち上げて書いてあったやろう?気にせんでええんちゃう。」
とは太田原。
「一応は標準語目指すで。こちらでは、その方がええんやて。あんたたち、そないな不安な目で見んといてくれへん……ま、ウチに任せとき。」
「わしゃ、斑目さんを信じてます。」
信じてないけど信じたい目で言うのは矢野だ。

「はいはい、ほな行くで。」


敷地内へ入ると、名前を先頭に真っ直ぐに真島組と書かれた木札の掛かったプレハブへ向かった。
プレハブ小屋の入り口をノックし、「おはようございます!お電話させて頂きました斑目と申します!」と声を張り上げた。

「おう、入ってええで〜」

あれ、イントネーションが違うけど関西弁が聞こえると認識してしまった名前の脳からほぼ完璧だった標準語が一時的にスポンと抜けてしまった。

「失礼します〜」

名前の口から出たのは完璧な関西弁のイントネーションだった。
ガラッと扉を開けて入ると、派手な男が目に入る。東京に行くと知った実家の関係者が見せてくれた沢山の写真に有った、嶋野の狂犬とも言われる男に相違無い。

「失礼すんなら、帰ってや〜」

男から聞こえたのは、ベタなネタ振りだった。コレに反応せずにいられる訳もなく、名前はクルッと振り返り片腕を上げて言った。

「ほな、帰らせてもらいますわ」

「斑目さん、わしら来たばっかりやないけぇ!」

すかさず一番近くに居た矢野がビシッと裏手でツッコミを入れる。当たり前な行動だった。が、ここは面接を受ける為に来た場所だ。

「ハッ!思わず乗ってもうた。申し訳ないです」

「せや!わしもや、すんまへん!」

深くお辞儀をする2人に、もう2人も一緒にお辞儀をしたのを見ながら、派手な男は機嫌良さ気に笑った。

「ええで〜、許したる!ほれ、さっさと座らんかい」

促されて4人はパイプ椅子に座った。
4人のうち男3人は、派手な男の姿に若干青ざめている。名前は、思ってたより派手な男だと微笑みを浮かべながら考えていた。
素肌に蛇柄のジャケット、黒い革のパンツ、ジャケットから見える和彫りに左眼を覆う黒い眼帯に、何より現在地。建設会社の組では無いのは明らかだ。頭に乗っているドカタヘルメットが妙に似合うような似合わないような、不思議な感覚だった。

「ワシが真島建設の社長、真島吾朗や。真島建設は来るもの拒まず、去る者は追い回す、の精神やからな、それでええならみんな合格や」

「ハイ!質問!」

「姉チャン、元気やなぁ。良い事や。で、何が聞きたいんねや」

「社員のみなさんの顔色が優れませんけど、月月火水木金金とか有り得へん業務な訳、有……るんですねぇ……いけませんよ!真島社長!程良い休暇に、程良い休憩は作業効率を上げるんですわ。みっちりずっと働かせるとか、非効率的にも程があります。今後は能力や資格の有無を考慮して、私が建設業経理士としても経験者としても口から手から出させてもらいたいですわ」

「斑目名前やったか?その度胸、気に入ったでぇ……ワシらには正直、ノウハウなんざあらへん。今日から2日は休みや。その間、名前チャンに話しをしてもらうわ。ハイ、名前チャン以外は今日は解散!明後日の朝8時には出てくるんやで〜」

心配そうにしつつも、名前が連れて来た3人も元からいた9人の社員もゾロゾロと帰って行った。
プレハブ小屋に残るのは真島吾朗と斑目名前の2人だけだ。

2019/01/22 up
2019/11/20 移動

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