05-真島建設
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「今まで名前チャン、犬飼、太田原、矢野……みんな良う働いてくれとる。名前チャンには、もう言うてあるんやけど、ワシら元極道やねん」
真島の言葉に犬飼も太田原も矢野も、あまり驚かなかった。
「まあ、そうやろうなって思てました」
犬飼がそう言うと、太田原が口開いた。
「むしろ、ほんまに元極道何ですか?現在も極道やなくて?」
矢野が太田原に同意するように頷いた。
「わしもそう思いますわ……隠す気なんて無いやろう思うくらいやったです」
「何や、気付いとったんか?まあ、元言うのは本当や。戻る事になる可能性は有る……それでも良えなら真島組に居ればええ。嫌なら今なら追わんどいたるわ。明後日の朝、居ったら戻った時は盃やで」
建設会社の社員としてやって来た3人への最後の選択だった。
けれど、この街で絡まれた時にそれぞれ真島組の誰彼かに助けられた経験も有ったらしい3人はそのまま残る事を選ぶつもりだろうと名前は見ていた。
「一応説明しとくけど、盃ちゅうのは、真島吾朗ゆう男を親分として極道の世界で生きるゆう意味やぞ。私かて東城会とは比べもんにならん小さな世界やけど、その隅っこで極道の世界を見てきた。せやから真島吾朗は筋は通す男やと思うとる。極道者としては良え男や。けど堅気から見たらタダの怖ろしい男や。これが最後の機会や。良く考えるんやで」
西田達は、ずいぶんと詳しいなと思うと同時に自分の親分である真島を褒められて、悪い気はしなかった。
「せや、ワシは良え男や。良う分かっとるやないかい。紋々入れるんやったら良え彫り師も紹介したるでぇ」
「真島さん、気が早いわぁ……ま、入れるんやったら怖いからって景気付けにアルコール摂取せんことや。仕上がりが汚いわ出血は酷いわで大変らしい。あ、それに夏場は特に痛いんやって」
「名前チャン、詳しいやんか」
「いや、私の実家でよう聞きましたわ。新人が夏場に彫ろうとしたら、彫り師に冬に来い言われたとか、飲兵衛の新人が焼酎飲んで行ったら、仕上がりに色が上手く乗らんで入れ直したとかねぇ」
「斑目さんの実家?」
話が分からないと、太田原が首を捻る。
「おお、せやった。名前チャンはとある組長の孫や。名前チャン自身は組とか関係無く来てくれてん」
あっさりと言った真島に、西田達も目を丸くしているが、真島も名前も普段の調子を崩さない。
「新しい建設会社がそうやとは思わんわぁ……面接でまさかの真島吾朗が出て来た時、びっくりしたんは私やからな。始めは東城会のフロント企業かと思うとったんやけど……なんや違うって真島さん言うてはるし……元々、真島さんをフロント企業の会長なら兎も角、社長には……」
「それや!ワシがもし極道に戻ったら名前チャンが社長してや。ワシは会長や!極道の勝手も分かっとるけど極道やない……フロント企業にはぴったりの人材やないかい!」
いい事思いついたとばかりに言う真島に名前は、いずれ戻るつもりでは有るんだなと妙に納得していた。
「話が飛びまくりですわぁ……私が社長?まあ、今と大して変わらへんか」
実際、あれこれ手配したり書類書いたりしているのは名前がほとんどで、真島は判子係に近い。
「せやろ。ああ、真島組の美人秘書も捨てがたいんやけど、兼任せえへん?」
急に思いついたらしい事も堅気で居続けるつもりも無いのだと言っているのと同義だった。
「美人て褒めてくれはるんは嬉しいですけど、どっちか一つやないと、私忙し過ぎて死んでしまいますわ」
「せやったら、組のモンを社長にする方が良えか?」
雑談に混ぜて真面目な話が有るのも少し慣れた名前は、普段通り応える。
「社長は男の方が舐められんとは思います。まあ、全ては真島さんがお決めになる事やわ」
「ま、そん時はそん時で決めるわ。ハイ、解散や!あ、名前チャン、飲み行かへん?」
話の続きでも有るのかと、名前は了承し、その場は解散した。
2019/01/26 up
2019/11/21 移動
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