魔女とNRC
イギリスでの任務を終えて、帰国した私は国内での任務に忠実に生きていた。
魔法を使える私の任務は魔法を使えぬ同僚の補佐だった。魔法使いを取り締まる部署は別に存在するから、私は此方に配属された。

身の周りの事は常に注意していたと言うのに…見知らぬ狭い場所に押し込まれている現状に、ぞっとした。
猫の様な見た事のない魔法生物だろう生き物が、私の閉じ込められていた部屋を開けたが決して友好的とは言えない様子に、怯えた振りで様子を窺った。
追い掛けて来る生き物に注意しつつも、その場所について得られる情報は無いかと目線を走らせるが、全く記憶にも無い場所ばかりだった。何となく、幼少期から任務として入学から潜入していたイギリスの魔法学校に似た雰囲気だけは感じられる。それに、自分の肉体が魔法学校を卒業したばかりの頃に近い若さになっている感覚がした。掌の肉刺まめも多い。今は気取られぬ様にと調合した薬液で滑らかで、苦労を知らぬ様な皮膚を得ていたのだから。

そろそろ人間に会っての情報収集が必要だなと思った頃、猫だか狸だかの喋る生き物が捕縛された。捕縛したのは烏の仮面を着けた派手な男だった。
男が言うには此処はナイトレイブンカレッジと言う世界有数の魔法士養成学校なのだと言う。魔法士、魔法使い、魔術師、魔女…まあ意味は近しいだろう。そして懐かしの組み分けは、此処では鏡が行うらしい。が、鏡には魔力が無いと言われてしまった。その時に私は生徒が男ばかりだと気付き、魔力が無いと言われた事も含めてダブルで首を傾げていた。
そんな筈は無いと、使い魔である蛇を呼び出せばシュルリと現れて私の前で大きく鎌首を擡げて、首を傾げた。
“妙な場所に来たね?私の主…”
“そうね、私のアラハ。私には魔力有るわよね?そこの鏡に無いと言われたのよ。”
“あはははは!しっかり主は有数の魔術師さ!幼い頃からしっかり教育されて、私の事も扱えるのだからね!”
“そうよねえ…ありがとうアラハ。”
黒いボディをくねらせて私の足元から登って腕迄来たアラハを撫でてやれば、淡い金の目が笑った様に感じた。
「ふぅむ、蛇語じゃの。中々に良い力の持ち主じゃ。」
「組み分けされないのに魔力は有る…不思議ですねえ…。」

其れでも組み分けは覆らないらしい。私はホーンテッドハウスを取り敢えずの住処として借りる事になった。
強制的にあの生物…グリムと言うらしい高温の炎を出すのが得意らしい生き物の世話をさせられる事にもなった。コレでもスリザリンの監督生経験者だから何とかして躾けてやろうじゃあないの。

***

「グリム、1点減点…コレでお仕置き確定ねえ…あらあ、逃げようって言うの?」

Immobulusイモビラス

「動けないわよねえ?」

Incarcerousインカーセラス

「ほら、縛られちゃ逃げられないわよね?お仕置きしてあげるわ!」

Rictusempraリクタスセンプラ

「笑い続けなさい!」

グリムのお陰で窓拭きをする羽目になって直ぐに、スリザリンでの規律を此処用にアレンジしてグリムに言い聞かせた。
其れの発動でグリムは一人、笑い続けている。

「反省出来ました?」

「や、やめるんだぞ!あはは!」

「あんまり聞き分けの良く無いコには、無理矢理にでも私に従順に成って貰おうかしら?これ以上は拷問だものね?まあ、その方が良いのなら…私は拷問だって出来るわよ。しかも上手いって褒められた事も有るわ…さあ、どうして欲しいの?」

今の姿がティーンの女の子だと忘れる程の、スパイ時代のデスイーター風味を滲ませた態度でグリムを躾けていた私は、パッと魔法を解いてグリムを抱き上げた。

「はあ…グリムは小さいから加減が難しいわねえ…さ、良い子になさい?出来たらちゃあんと御褒美あげるって言ったでしょう?」

笑い過ぎで泣いているグリムを優しく撫でて、寝かし付けた私はホーンテッドハウスを見渡して、まるでスリザリン寮の様になったオンボロ寮と学園では言われるその屋敷をここまで改装した事に少しだけ、悦に入った。



2020/07/30
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