好きの反対は、 2-1(B-side)
歳下の知らない男の子と変な生き物と一緒にオンボロ寮に住む羽目になっていた。

学園長がオンボロ寮に来て「ユウくんとグリムです」何て紹介してきて「後輩ですよ、良かったですねえ」とか何とか言われた。男の子かあ…良いんですけど…私は女なのですよ。だからオンボロ寮に住んでる訳ですよ?そして異世界から来たから払えない学費は、良い成績を維持する事で免除されると言う奨学金制度を学園長に提示されたから、其れを実行中な訳で…生活費の依存度を下げる為のモストロ・ラウンジの仕事も有るから、私って忙しいんだわ。今のところは借りてた生活費を返し切った所でね?貯金したいのよ。良し、此処は条件を提示するべきだろうな。
「ああ、学園長。契約しましょう?」
ささっといざと言う時用の契約書(黄金の契約書イッツアディール)を取り出して、さらさらと文章を書く。

生活費はアキとユウ及びにグリムは別とする事。
学費も同様であり、成績をもとにした奨学金制度を活用させる事。
制服等は初回に限り支給とする事。
オンボロ寮にあるアキの私物は、退去の折には責任持って、持ち出す事。
アキは任意で、寮分けの際の適性が有った寮に転寮を可とする事。
オンボロ寮には勝手にこれ以上の手を加えない事。

この内容が守られない時には、アズールが卒業する迄、彼に従ってもらう事(イソギンチャク)とする契約書だ。

これは破棄されないように、アズールに報告した後に私が保管しよう。

「さあ、学園長、サインを!さあ!」

「はあ、仕方ありません。私、優しいので!」

内容を読んだのかわからない位、学園長はさっさとサインした。

「はい、確かに承りました。では、宜しくお願いしますね、ユウくん、グリムくん」

***

「よろしくお願いします!」

「お前もオレ様の子分にしてやるんだゾ!」
ああああ!グリム何言ってんだ!唯一の女の子に何言ってんだ!結構な美人で巨乳だから、あわよくばお近付きに!と思ってたのに!
「ふっ、あはは…私を?お馬鹿ねえ…ああ、私の彼氏とか友達がココに良く来るから、そのつもりでね」
綺麗に笑ったアキ先輩の言葉にギョッとした。彼氏居るんだ。いやいやでもオレには同じ寮と言う強みが!
「じゃあ、君の部屋はそっち。私の部屋には入室禁止、あとは…そうね、冷蔵庫の中身も含めて人の物は勝手に取らない事。物は壊さない事…弁償させるわよ?じゃ、お休み」
「あ、はい!おやすみなさーい!」
あーもう、どうやってアプローチしよっかなー?

***

なんか軽薄そうな子だと思った。さっさと転寮したい。この日は早くに就寝した。早く起きて鉢合わせしない様にと思ったからだった。

予定通り早く起きて身支度を整え、冷蔵庫や私物のチェックを済ませて冷蔵庫の中身を全て取り出した。特にグリムは信用ならない。ユウってヤツは未だどんな野郎か知らんけど、あんまり好ましく無い感じがした。食材を風呂敷で包んで、大切な物を持って自室の施錠をしっかりして、サバナクロー寮へ駆け込んだ。
食材を消費させてください。

「ああ、あの騒ぎの中心だったガキか…まあ、お前だけなら良いぜ」
訳を話せばレオは即座にOKを出してくれた。早速、食材を消費にかかる。
「本当に助かるわ。自分で稼いだ分を他人にやる程のお人好しさは持ってないからさ」
野菜を見て嫌そうな顔しながらも、仕方ないって言ってくれる。本当に有り難い。
ユウくんは1人でも大丈夫さ。私がオンボロ寮に寝泊り始めた頃は雨漏りしてたし、シャワーは壊れて水しか出なかったんだ。右も左も分からないままに勉強にマジフトにと励んで、今の私があるのだから、彼もお友達と頑張れば良いさ。家がちゃんと綺麗になってる分、どうとでもなるだろう。契約書はちゃんと読ませたし。

レオの分と私の分は部屋に持って行って、談話室に残りの料理を1人分ずつパック詰めして並べていた。
「あれ?アキさん来てたんすか?」
「あ、おはようラギー。お邪魔してるよ。コレ、良かったらみんなで朝食にしてくれる?」
「おお!良いんスか?!やりぃ!」
山の様なパック詰めされた朝食セットは多いとは言え、全員分は無いから早い者勝ちだ。
「アキ先輩の朝飯!早いもの順っスよー!!」
そう叫んだラギーは当然しっかり自分の分を確保してある。
呼びかけに気付いた寮生が起きてくる前に寮長の部屋へ戻ろうと、踵を返す。ラギーには手招きして静かに誘った。

***

アキさんは、人間の知り合いの方が少ない。サバナクロー寮とオクタヴィネル寮、ディアソムニア寮の知り合いのどれかに何時も囲まれている。寮ごとだったり、入り乱れてたり…何つーか、不思議な友好関係の広さだと思う。
ま、一番入り浸ってるのはサバナクロー寮なんスけど。後は仕事でオクタヴィネル寮に良く行ってるのは知ってる。あのアズールの黄金の契約書での契約を任されてるって程なのは、中々出来る事じゃない…。
そんなアキさんだけど、身内と認めたヤツら以外には案外冷たい所がある。時々、こうやってオレ達には自分の稼ぎから飯を食わせてくれるし、材料さえ揃えれば、大体のものは作ってくれる。繕い物だって出来るから、寮生の制服の取れたボタンを付けてやってるのも偶に見る。其れからテーブルマナーだってちゃんとしてる。レオナさんが気付いて無い程度には違和感無いお上品さがある。その割に庶民的と言うか…だからオレは、アキ先輩は家柄は良いけど、没落してたんじゃ無いかって勝手に予想してる。其れも有って異世界でも、不都合を跳ね除け、成績も上位に食い込んでいけるバイタリティがあるんだろうなって。レオナさんがこんなに気に入ってるのも分かる。

***
2020/08/09
4/5
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