日本語が通じない件について 2
「理由を教えて下さい」

目が合っても、直ぐに逸らされる目線。其れはレオナにとっては気になるものじゃない。
先程まで、恐怖と不安に震えて泣いていたのにも関わらず、相変わらず小さく震えながらも、そう言う少女に、レオナは自分で立とうとする心と不安な心が鬩ぎ合っているだろう少女に、夕焼けの平原での女性に優しくと躾けられる男子として、当然優しく接した。

アキは混乱状態だった為に気付きはしなかったが、彼女の取り乱し様に、早々に新入生は寮に帰され、その場には呼ばれた教師陣と寮長のみが居た。まあ、マレウスは居らず、代わりの様にリリアが居るわけだが。
レオナ以外には寮長を務める者として、何となくは聞き取れていた。教師陣は聞き取りだけはしっかり出来ているが、レオナ以外には、此処まで流暢に喋るとまでは行かなかった。だから、レオナが彼女に話しかけ始めた時から必死に聞き取ろうとしているのだった。

「お前の帰りたい場所は、土地は有れども全て変わっている…言語すら、俺達が初めに話していた言葉なっている。この意味が分かるか?」

少女はその言葉を聞いて、ギリ…と歯を噛む音を立てた。深呼吸をしてから、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「つまり、ああ、言葉にしてしまうのは恐いけれど、此処は未来だと仰るのね…私の帰る場所は既に祖国には無いと」

「何故、そこまで言い切れる」

そこまでの事を読み取れるとは思っていなかった。

「祖国が軽々しく、この言葉を棄てるとは思えません。100年も有れば大きく変化する言葉ですから、過去だとするなら私と貴方の口語文が通じるのは可笑しな話だと判断しました…其れだけです」

たった其れだけの事で、彼女は判断したと言った。確かに年代毎に新しい言葉が生まれては消えるらしいと当時の誰かの手記にはあったが、其れが判断材料になる程だと少女は言う。
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