恋人にするなら?結婚するなら?
オンボロ寮に暮らす二人と一匹は、結構仲が良い。同郷の女子は二人だけと言う状況で仲違いするくらいなら、協力して生き延びようと互いに思う程度から始まった関係だったけれど、意外にも気が合ったのだ。
典型的な年頃の日本人女性である二人は、ちょっとした事で笑ったり、時には同学年のポムフィオーレ寮生と共にスキンケア談義をしたり、ダイエットとして体力育成に女の子なりに本気で取り組んだり、仲良くなった同学年を誘って勉強会をして、分からない事は教師や先輩に聞きに行き、エレメンタルスクールやミドルスクールの頃の教科書を輝石の国出身のジャック、薔薇の王国出身のデュースと言う具合にバラバラに借りて基礎知識から勉強に勤しみ、国毎の違いに二人で楽しくはしゃいだりしていた。
元が勤勉故に、著しく成績が低いという事は無い二人が順位を落としたのは、イソギンチャク事件の時だけだった。
精一杯、学園で勉学に勤しみながら、学園長の半ば強制的な依頼を受けたりしている内に、それぞれの寮生と知り合って人となりを知って行く内に、一癖も二癖もある学園内のイケメン達について二人は殆ど一定の評価をしていた。当然、日本人女性的感覚のもとで。
そんな彼女達が二人きりで学食でランチをしているのは珍しくは無い。エース、デュース、グリムが揃って罰則だったりするのは良くある事として、このウィンターホリデー明けまでには馴染んでいた。

「ねえ、実際問題さあ?ここってイケメンは多いじゃん?」
そう切り出したのはユウだった。
「んあ?まあ、そうねえ。イケメンは多いね。でも私達にとっての結婚相手には向かない人の方が多いわね?」
話の意図を薄ら掴んで、アキはそう返した。ちょっと離れたところに居た同級生や先輩達は固まった。
「だよね!絶対に王族とか無理じゃん?私らって一般人もいいとこだし?」
耳の良いレオナは頬が引き攣り、マレウスは目を見開いた。
「言えてるわ。常識がただでさえズレてるから擦り合わせが必要なのに、それすら難しそうだものね。富豪も似たようなものだから無理よ」
カリムは気にして無かった。
「あ、学年毎に仲良い人らで考えてみない?」
ユウの提案がなされた頃、遅れて現れたエーデュースはジャックやエペルの居る辺りに引っ張り込まれて現状の説明を受けて、大人しく聞き耳を立てていた。
「良いわよ。私は一年生なら断然ジャック、二年生ならリドル先輩、三年生なら…んー、ケイト先輩かしら。先生ならクルーウェル先生」
「良いっスなー!めっちゃ分かりみ深い!エースは友達としてなら楽しいけど恋人以降の関係は、無理難題押し付けられそうで嫌だもんなー」
「そうなのよねえ……。デュースはジャックの次、二番目ね。アイツは説明したら無理だったり嫌な事は一応、理解しようとしてくれる系だもの」
「言えてる!まあエペルはなー、隣に立つと劣等感がわくから無理」
「良いヤツだと思うけどね、それに私に農家は無理だわ」
「農家はな……畑仕事苦手っス。セベクは?」
「ああ、もし互いに惹かれ合うって偶然が起きたら有りだけど、排他的っぽい雰囲気あるでしょう?グイグイこちらから仲良くはなれそうに無いかなと思うの」
「確かに。それ言うならシルバー先輩とかのディアソムニア寮生はみんなそうだと思うなー」
「そんなイメージ強いわ。異類婚姻譚としてお話しを読むなら楽しい事間違い無いでしょうけど、ほら、みんなに昔使ってた教科書借りて色々勉強して、それだけじゃ分からないから、セベクとかにも直接、妖精について聞いたりしたでしょう?あの時に聞いて分かったわ…彼らの寿命は私達の最大百年を大いに上回るのだと…だとしたら、確執が合って当然だと思わない?」
「ああ、アキちゃん、さすが!そうだよねえ…ウチの国だって朝廷が起こる時の二千年以上前の戦争の事を語り継いでんのに、その時の当事者が居たら…絶対にアタシなら忘れないっスわー」
「そうでしょう?私達は恩も大切だけれど、怨みは強い程に死後の影響がある国に生まれたわ……道真公は何百年経とうと未だに衰えないわ。七十年前に戦争に敗れた占領下ですら、その猛威を奮ったのだからね。けれどソレを覚えてる人に日々、言い聞かせられていたら……セベクくんは良い人だとは思うのよ?人となりだって好ましい。日本人的には忠誠心の高い従者って素晴らしいじゃない?」
「良いっすね!忠義の部下!」
「んまあ、裏切りだってやり方と状況によっては美しいと思うわ。けど、そこには忠義者が在ってこその対比なのよ」
「ああー、良いですよね!敵わない筈の裏切りもまた、そこで敗れようがその気概に惚れ惚れしちゃう!はあ、そこに惹かれるのも私達のサガだ」
「言えてる。さあ、次はユウちゃんの番よ。」
「一年生だと、アタシの場合は…デュースかなー。アイツ、アホだけど根っこは良い奴だと思うんすわー」
「そうね。悪いヤツじゃないわ」
「ヒヨコ事件とか、ちょっとキュンってしたんっすよ!」
「あら、良いじゃない。ま、母性本能擽られるタイプよね。分かるわよ」
「そうなんっすわー!目付きは鋭いし、元ヤンなんだけど、ちょっとピュアな所がたまらなく可愛くないっすか?」
「分かる。ちなみに私は、イケメン、クール、カッコいい、胸キュン、好みだわって感覚、全てひっくるめて可愛いって発言するタイプなの。ユウちゃんは?」
「同じっすな!日本人女性の感覚は千年以上変わらないのかも知れん…!」
「まあね、美髪・美白・美声と言う美人の基準もその頃の感覚を残している…その頃の残虐性はかなり鳴りを潜めたけれど、なんだかんだで我慢の限界まで行くまでは静かだけれど、限界だと言う範囲を超えた瞬間にブチ切れるじゃない?その時のキレ方に、そのDNAが残ってると思うのよ」
「ああ、先の戦争の時もそうだったって聞いたなあ…一度切れたら即戦争か、経済で一気に締め付けるか…そんな1か0ですもんねえ!」
「そうそう。遺憾の意で済ませている内に内圧昂まって国民が我慢出来ずに爆発したりねえ…特に陛下を侮辱されると怒りが別枠で一気に破裂するのよね」
「まあ、陛下は国の最高神官でも有るからなー…宗教に興味無いって言いながらも、実際には宗教的行為は生活の一部に馴染んでいるだけだし、何なら他国の宗教の神だろうと自国の神と並べて奉る事に異論は無いレベルで神は神って認識だし、何なら悪神こそ丁寧に祀って怒りを鎮めるって感覚だしね」
「そうそう、ここくる前に私、ハデス様を讃える集会に参加してたのよ。冥界の王はハデス。我が国の冥界の女神はイザナミノミコト…どちらも人気の高い神様じゃない?」
「あ、すげー!そんな集会あったんだ!まあハデス様はうちの国では人気っすねえ」
「外の神ではトップよね。楽しかったわ。地面に穴掘って牛乳とオリーブオイルを流し込んだり、集会参加者と歓談したりね。あ、話を戻しましょう?」
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