私の世界は… 2
ハーツラビュエル、サバナクロー、オクタヴィネル、スカラビア、ほぼ毎月の様に起きたオーバーブロット事件は、まあ確かに大変だった。鍛えていても魔法も使えない女の身では、結構な負担が有ったのは確かだ。
はじめの一回以外の生理は止まって久しい。元々、生理の重めなタイプ故に、止まってるのは面倒じゃなくて良いと思うことにした。ストレスで止まりやすいと知っていた事も有る。
冬になって喘息の発作が時々出る様になってしまった。カビもハウスダストも原因だと分かっているから、懸命に掃除だってした。其れでもやっぱり苦しい時が有る。
バスルームも偶に水しか出なくなったりして心臓に悪い。まあ水でも使えるだけ良い。キッチンは有り難い事にコンロが一個生きていて、オーブンも火が付いたしシンクも使えた。
庭を耕して家庭菜園も早々に始めたから、ちょっとは野菜や香草が使えてホッとしている。
あんまりに冷えるからサバナクローに入り浸り、その間は体が温まるから、発作が減って助かっていた。
「なあ、そういやよ、どうしてサバナクローに入り浸ってんだ?」
バランス良くなる様に、けれど質素なランチを食べていた私に歳相応なガッツリランチを食べているエースに聞かれた。一緒に席に着いていたグリム、デュースとジャックもこっちを見ている。
「そういや、良く見かけるな」
「ああ、暖かいから体調に良いって実感したからだよ。サバナクロー行くと発作が減るし」
隠してるつもりも無かったから、普通に言った。ちなみに性別も別に隠してるつもりは無い。
「発作?病気なのか!?」
デュースが驚いた声を上げた。驚いていたのはデュースだけではなかった。
「大丈夫なのか?」
「保健室には行ったか?」
ジャックとエースが続けて聞いて来た。
「ああ、喘息なんだよ。私の場合は、体調が安定してる時は大した病気じゃ無いから」
安心させようと言った訳じゃあ無い。私の場合、本当に安定してる時にはなんとも無い程度の喘息だったから。風邪何て引いたら、発作の咳で喉が切れて血を吐く事も有るから風邪も嫌だし、発作だって死ぬ程苦しいから、当然だが起きて欲しくは無い。
「ぜんそくってなんなんだぞ?」
「アレルギーとか疲れとかで気道が炎症を起こして狭くなるんだよ。そしたら咳が出たり息が苦しくって、ゼイゼイ、ヒューヒューって呼吸音になる。此れは軽い時ね。」
「ああ、走った後みたいに?」
エースの言葉に頷き続けた。
「そうそう。ちなみに、個人差が激しいけど、横になれるくらいなら小発作で、横になれない程苦しいけど歩けるのは中発作、苦しくて動けないのは大発作。チアノーゼ起こして呼吸脆弱もしくは停止したら重篤だよ」
「それ、ヤバいんじゃないのか?!」
デュースがちょっと青ざめていた。
「ああ、下手したら死ぬよ?」
死ぬよ?の言葉にジャックやグリム以外にも聞き耳立てていた奴らも含めて絶句し固まった。
「個人差があるんだろ?じゃあ、監督生はどのくらい?」
「私の場合は大発作くらいまでが多いけど…風邪引いたら喉が切れて血を吐く程度の発作は良くやるからなあ…」
エースの問いに正直に答えたアキは学友達の真っ青な顔色に、言わなきゃ良かったか?とちょっと思った。
「お前は、サバナクローに来たら、発作を起こさないんだな?」
「起こす時もあるけど、体感では確実に減るね」
「子分はサバナクローで寝泊りするんだぞ!死ぬんじゃないんだぞ!」
グリムが必死に半泣きでアキの腕にグリグリと擦り付いた。
「いやあ、流石に其れは迷惑だって。制服だって運動着だってサバナクローの皆さんにも、いっぱい助けて貰ってるんだよ?この上で寝泊りとか気が引けるってば…今だって丁度良い気候だからって勝手に入り浸ってるしさあ」
女の割には力だって有るし、体力だって有る。その分だけ、このD世界の女の子よりも逞しい筋肉を持つアキは、男だと思われている故に、小柄な男の子だ。そこにひ弱が加わったと勝手に判断され、同じ学年からも歳下の様な扱いになって行こうとしていた。
「監督生、俺がレオナ先輩に掛け合ってやる。この前みたいに急な三日間じゃねえんだから空き部屋の掃除して、引っ越せば良い。」
サバナクローは仲間だと認識したら、ちょっと甘くなる。群れの仲間は大体は助け合うものだからだ。ジャックも例に漏れずサバナクローだった。
「ええ?!悪いよ、そんな。其れに…グリムを放って置けないよ…」
「うなあああ!監督生ー!」
グスグス泣くグリムの毛並みを撫でながら、食べかけのランチを再開した。
その後の話し合いで、入り浸っているのだって気にしないで良いんだと言ってくれた事で、アキは益々サバナクローに入り浸る様になった。
***
2020/08/05
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