1-1/なくなってしまったもの
年明け後の仕事始めから二週間程経った頃、別室に呼ばれ、一つの封筒を渡された。その場で開ける様に言われ、封筒を開封した私は、その中の辞令書に目を丸くした。その様な時期では無い上に、封筒も会社の物では無い。中身を確認すると、これまた驚きに息を呑む。所謂転職の誘いと言うか、会社も納得の上の転職決定と見るべき書類だった。意味がわからない。勝手に決められるのは腹立たしい。
一先ずは一通り読み終えると、上司はクビの辞令書だと思っているらしく、いつも以上に気遣ってくれているのが分かる雰囲気だった。何故、真面目な君が…と憤ってくれたのは少し意外だった。意見の対立もままあったと言うのに。
書類に記された通り、即座に仕事の引き継ぎをして指定された十一時に会社の会議室の一室へ向かった。
そこには既にスーツ姿の男性が一人居た。
「佐倉様、急なお話で申し訳ありません。ですが、これから話す事は全て事実です。」
彼は時の政府に遣わされた職員である内島と言うらしい。時の政府と言う機関名に彼女は首を傾げた。某ゲームの設定に在る機関名しか思い浮かばない。
「貴方様には真名を隠し、現世を離れて刀剣男士を率いる審神者となり世界の歴史を破壊する歴史遡行軍と戦って頂きたいのです。」
いや、ちょっと待って…とうらぶ?ドッキリ?と混乱する佐倉を見ても納得した様に彼は頷く。
「はァ…意味が…よく分かりません。」
「それはそうでしょう…殆どの方がそう仰います。ですが、時間遡行軍は各国の歴史を壊し、本来居るはずの人物が消えていくのです。そして、貴方様が戦場に出る訳ではございません。」
そりゃあ、武道の心得など無い一般人に戦場に立てと言うのはもう敗戦確定路線だろう。さっき刀剣男士とか言ってたな…それは信じられないぞ。そんな二次創作ですか?って内容。
「先程、申しました刀剣男士と言う日本刀の付喪神を率いて戦って頂きたいのです。」
そこでハッとして家族の事が心配になった。まさか消えて無いよね…。
「すみません、ちょっと確認したい事が有るのですが。」
「ご家族の安否でしたら、どうぞ。」
ジャケットのポケットからスマホを取り出し、SNSアプリを開く。
家族グループはあったが、妹の名が存在しない。一覧から佐倉の姓を探す……やはり一人居ない。
写真を開き妹の写真を探すが、写真には人影すら無く風景だけがあった。私の隣に居たはずの妹が……写って居ない
大切な妹が居ない。
「嘘だ……なんで、私の……」
そして、画面にあるはずの刀剣乱舞のアイコンが無い。三日月のアイコンが無かった。
「なんで……ああ、時間、遡行軍……そう言う事ね、これがそうなの。」
ゲームが現実になるって、こう言う事なんだ。
「まさか!」
内島の声に我に返った佐倉はスマホの画面から目を離し、彼の方を見た。
「貴方の言う通りなのだとしたら、私の妹が消えた……のだと思います。時間遡行軍とやらの仕業だとして、こんな事……っ許さない!」
溢れようとする涙を堪えて、佐倉は大切な妹を奪った時間遡行軍の行動でこれ以上家族が消え無い為に、戦う決意を固めた。
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2022/09/26 最終更新