審神者は斯く戦えり 2

「何奴よ」
「…これは…戦場…」
与一では無い気配に問答するも、其奴の耳には入っていない。血の匂いを漂わせた其奴は日の本の言葉を発している。
「おお、日の本言葉か、して…何奴か聞いとるんだが?」
「私は備前翠玉…きさんこそ何者なにもんじゃ」
備前翠玉、見目に似合う名だがその言葉は豊久を髣髴とさせる。
「ほおう、姫武者か。俺は織田前右府信長よ」
「は?右府と言う事は天正六年、つまり1578年以降、そして前右府?ああ、詰まるところ此処は地獄か…そうよね私は地獄行きに相応しかろ」
ぶつぶつと呟く声を信長は確かに聞いていた。
(ほお、こんだけの情報で年代を予想するか、面白い女じゃ)
「して、あの人は?」
直ぐに気を取り直し翠玉は刀を振るう武者について聞いた。
「彼については直接聞けば良いでしょう」
それに応えたのは与一だ。翠玉は驚いた様だが肩を跳ねさす事もなく与一を見た。
「貴方は」
「那須資隆与一」
「は?いやいや、時代が…ああ、そうだ地獄なら地獄じゃ言うんやったらあいつらも居る筈…私ん部下が…先に来てる筈…」
腰の刀に、背に負った槍や薙刀に揺らめく影が見えた様な気がして、信長は目を瞬かせる。一瞬で消えてしまった其れに見間違いかとも思うが、そんな筈は無い。気配がする。
「待って、未だ死んでないよ?」
与一に言われ、翠玉は首を傾げた。
「じゃあ何で那須与一と織田信長が同時期に存在している?」
「それだけじゃ無い、アイツは島津んところの武者らしいよ」
「島津様の…どのお方だろう…」
今までの強い目のままに、嬉しそうに翠玉が言った時、決着は着いた。耳の長い男達が、寄って集って金髪の人間を刺して殺した。

***

「おい、豊久、こいつは新しい日の本の奴じゃ!してこの箱には俺が座ろうと思うとったがお主に譲ってやろう」
勢いで豊久は箱に座った。