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アパートに着くと、私は一目散に侑の部屋を目指した。出かけていたらどうしよう。その焦りから私はインターホンを連打する。
「……はい」
扉を開けた侑は、これまで見たことがないほどにやつれた表情をしていた。
「侑、いきなりごめん。今治君と会ってきたところなんやけど、伝えたいことがあって――」
「お前がどんな情けない告白したかは知らんけどな……情けない告白グランプリ優勝は俺や」
私の言葉を遮って侑は話し始める。私は早く侑に好きだと言ってしまいたいのだけど、侑は侑ですっかり自分の世界に入ってしまっているようだった。
「今まで散々応援しといて……治のものになったってタイミングで、それでも言わずにはいられんのや。俺はホンマに馬鹿や。お前のことが好きや」
侑はここで私が悲しげな表情を作り優しく侑をフると思っているのだろう。だが現実の私は、侑の頬に手を当て冷静に伝えていた。
「馬鹿なんは知っとる。現に私治君と付き合ってないしな。ついでに私達両想いなんやから、ホンマ情けない告白グランプリ優勝や」
「ハア!? 先に言えや!」
「言わせてくれんかったんは侑やん」
侑は嬉しいやら情けないやらで複雑そうな顔をしていた。一番にあるのは驚きだったのではないだろうか。侑は最初に私が治君に告白しようとした時、断った張本人なのだから。でも人の気持ちは変わる。私も侑も、いろんな人と付き合って今がある。今に勝るものはない。私は今、侑が好きなのだ。
侑は力強く私を抱きしめた。今度こそ正面から、顔を私に擦り付けながら。私も侑に腕を回して両想いの喜びを分かち合う。
「ようやく付き合えたわけだけど、何がしたい?」
「引っ越しや」
キスやセックス、と言うものだと思っていた私は意表を突かれた。侑は今のアパートにそんなに不満があったのだろうか。
「俺の今の稼ぎじゃいくらでも別のマンションに移れんのにこんな安アパートにいたんはお前がおったからや。お前が一緒に住むんやったら、もうどこでもええ」
「何で同棲することになってんねん」
「前に同棲するって話したやろ!」
「冗談言うてたやろがい!」
ロマンチックな話をしていたはずが、いつもの関西人らしい怒鳴り合いに発展してしまう。これはもう私達の性なのだろう。「途中まで本気で言ってたん察せやアホ!」と言いながら決して私を離さない侑を愛おしく思った。口では反対しつつも何を新居に持って行くか考え始めている私ももう、侑に絆されているのだろう。