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「なあ、俺ら付き合おうや」
「はあ?」

 私は間延びした声を出した。それも仕方ないだろう。たった今私に告白した侑は、どう考えても私のことを好きではないのだ。仮に好きならば、人の大勢いる休み時間の教室という雰囲気も何もないシチュエーションで告白したりしないだろう。罰ゲームか、それとも何かの罠にはめるつもりか。目を細めて「何企んどんの?」と聞いた私に、侑は笑って答えた。

「タイキがな、ミホのこと好きらしいねん」
「えっ、そうなん!?」

 今度こそ私は大声を出した。タイキとは侑が教室でよくつるんでいる友達であり、私とも親しい。ミホは私の親友である。二つのグループが合体するようにして、私達はよく四人で遊んでいた。休日に待ち合わせをして出かけたこともある。恋愛感情を持ち込んだことはなかったが、タイキは違うのかもしれない。

「ミホはタイキのことどう思っとるんやろ。タイキとか侑かっこええなんて話したことなかったな……」

 私は顎に手を当てながら「少しはしろや」という侑の突っ込みを聞き流す。侑はなんてことない様子で続けた。

「ミホがタイキをどう思っとるかなんてどうでもええねん。俺ら四人グループやろ? 俺ら二人がくっつけば嫌でもミホはタイキのこと意識する」

 得意げな顔で語ってみせた侑に対し、私は引いている様子を隠しもせずに侑を見つめた。

「なんていうか、やり口が性格悪いわぁ……」
「親友のために一肌脱ごうってわけや。優しいやろ?」

 確かに侑の言う通り私達が付き合えばミホはタイキを意識するかもしれない。仲良しグループの余り物同士でくっつくなんて少女漫画ではよくある話だ。

「どうせお前に協力してほしいなんて言うたら、バッレバレの態度でミホにタイキのことどう思っとるか聞こうとするやろ。そんなんするくらいやったら、俺の話に乗った方がええと思うけど」

 私は頭を回す。直接協力を頼まれたらわかりやすい態度でミホに接してしまいむしろ悪影響させてしまうという点は否定できない。私は何かと不器用だ。その点侑は振る舞いが上手い。勿論悪い意味でだ。侑に任せておけば、ミホは自然とタイキを意識するようになるかもしれない。私は改めて侑を見上げた。

「なんか、ミホとタイキ人質に取られて迫られてるみたいやわ」
「ミホとタイキ人質に取られとるんはこっちや。何が悲しくてお前なんかと付き合わなあかんねん」
「何やと!?」

 私が叫んだ途端、侑が距離を詰める。侑の視線の先を見ると、ちょうどミホが教室に入ってきたところだった。

「で、どうするん?」

 どうするも何も、既に乗せられてしまっている。私は仕方なく頷いた。この選択を、きっと後悔することになるのだろうと思いながら。