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 ブルーロックでの日々を経て、凪はプロフットボーラーとして活躍している。俺はと言えば、家の会社を継いでいた。決してサッカーを諦めたわけではない。俺の意思で、経営の道を選んだのだ。

 とはいえ、サッカーもそうであったように一筋縄ではいかなかった。とりわけ人材の調達、育成には骨が折れる。みんなが凪や俺のように動けるわけではないのだ。部下が全員俺だったら、凪だったらと思わずにはいられない。

 その時、ふと俺の頭にある案が浮かんだ。凪を無理やり、俺の会社へ入れてしまえばいいのではないか? 幸か不幸か、俺にはそれを可能にさせる財力や頭脳があった。考えた筋書きはこうだ。凪に女性をあてがい、その女性を妊娠させる。勿論俺ではなく、凪がだ。身を固めざるを得なくなった凪は、安定とは程遠いプロ生活を諦め俺の会社に入る。なんと美しい計画だろうと思った。そこで白羽の矢が立ったのが、高校時代の同級生の苗字というわけだ。

「お前、凪のこと好きだろ」

 俺が言うと、苗字は飲んでいたものを吹き出した。ハンカチを渡しながら、俺は内心ほくそ笑む。思っていた通りの反応だ。この感触は、悪くない。

「俺がお膳立てするからさ、凪と付き合ってみろよ」

 そう言った俺に、苗字は不安そうな視線を向けた。

「何で、そんなに協力してくれるの……?」

 苗字はここで、「凪も苗字のことを好きみたい」とか、「見てて焦ったい」という答えを期待しているのだろう。勿論そういった期待には乗ってやる。

「高校時代のよしみだろ。諦めんなよ。凪は全然、遠い人なんかじゃない」

 すると苗字の顔は光がさしたように輝いた。その表情を見て、俺はよし、と拳を握る。第一フェーズクリアだ。あとは苗字妊娠計画に向けて、ひた走るのみである。