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「なんだ、今度のターゲットってこんな弱々しい女の子なの?」
殺連に新たに登録された依頼に南雲は赴いた。指定場所は郊外からさらに車で数時間かかる田園地帯だ。緑が萌える中で、使い古されたベッドに横たわる少女の生命力は儚いものだった。これならきちんと依頼文を読んでから来るのだった、と南雲は後悔した。暇だから近くにあった依頼書を適当に持ってきたのだ。
「すみません」
少女は初めて喋った。久しぶりに人と話すような、しわがれた声だった。南雲はこの部屋に来るまでに誰ともすれ違わなかったことを思い出す。少女は、どうやって生活しているのだろう。
「で、どうやって死にたい?」
南雲は武器を取り出した。今から殺す相手がどうやって生活しているかなど考えても無意味だ。南雲の武器を見ても少女は臆せず、瞳にほのかな光をともす。
「楽にしてください」
南雲は一瞬動きを止めた。大抵殺しの依頼は第三者から入る。あいつを殺してくれ、と。少女は多分、自分で自分を殺すように依頼をかけたのだ。
「私病気なんです」
「見てればわかるよ」
こんなに生気のない人間を見たのは初めてだ。少女は小さく口角を持ち上げた。
「七月十五日にあなたが殺してくれませんか」
「自殺志願者なの?」
自殺に南雲を使うとはなんとも贅沢な。南雲がORDERに所属していることは知っているのだろうか。
「早く楽になりたいんです」
「じゃあ今殺されればいい」
「やはり死ぬのは怖くて。覚悟を決める時間です」
病気のことはわからない。だけど、こんな弱々しい生き物を強制的に殺したところで南雲の格は上がらない気がした。
南雲は出した武器を収める。とりあえず、今少女は殺さない。となると少女の頼み通り、期日に殺すしかないだろう。依頼は受けてしまったのだし。
自殺を手伝うのはなんとも奇妙な感覚だ。南雲なら楽にも苦しいようにも殺せるけれど、果たして少女はどのような殺され方を望むだろうか。とりあえず、少女を殺すまで南雲はここに滞在することになる。田舎でスローライフも悪くないだろうと、南雲は適当に歩き出した。