▼ 4 ▼


名前の言う「次」は兵庫では行われなかった。正月休みが終わり、侑達は現在の家へと散り散りになったからだ。これは後から知ったことだが、侑と名前の家は思いのほか近かったらしい。上京したということは知っていたものの、家の具体的な場所は知らなかったため侑は驚いた。東京でも同じようにホテルでするのだろうと思っていたら、名前は当然のように侑を自宅のマンションへと連れ込んだ。危機感がなさすぎるのではないかとか女の一人暮らしでこれで大丈夫かとか考えることは色々あったが、全て自分が名前のセックスフレンドだということで解決した。そうだ、侑は名前のセックスフレンドだから今ここにいるのだ。

理解した途端に侑は名前をベッドへ押し倒した。家へ上げたのは名前なのだし、実際に侑は名前のセックスフレンドなのだから文句を言われる筋合いはない。今日も侑はセックスをして、通い妻よろしく夜の内にいそいそと自宅へ帰るのだ。

暖房もつけない部屋の中で、二人は白い息を吐きながら体を重ねた。相変わらず名前は行為が終わるとすぐに服を着て、甘い雰囲気などなかった。だがこれもセックスフレンドなのだから仕方ない気がした。それ以降、二人の逢瀬は名前のマンションで行われるようになった。


勿論名前を好きだという気持ちはまだある。なければセックスフレンドなどやっていないだろう。だが前のように、どうしても正式な恋人になりたいとはあまり思わなくなっていた。名前とセックスができるなら、恋人でもセックスフレンドでも関係ないような気がしたのだ。いっそセックスフレンドだと開き直った方が早いのかもしれない。そんなことを考えていた数十分後に、侑はそれを撤回するのだった。

やはり名前を、自分だけのものにしたい。目の前で喘ぐ名前を見ながら考える。この切ない声も、快感に悶える顔も、全て自分のものがいい。高校生の時、そう思ったのではなかったか。思えば、高校生の時は今よりずっと真っすぐに恋愛をしていた気がする。

だが、どうしたら名前は侑のものになるのだろう。一度順番を間違えた関係の修復は難しいと聞く。名前が侑を好いているのかもわからない。ならば侑は、自分のことを好きにさせなくてはならない。

行為後、手早く服を着る名前の裾を引っ張って侑は横になったまま言った。

「俺の試合、観に来いや」