長いようで短いそれでいて窮屈な会話文


『あっ、天海君おはよう』
「おはようっす名前さん。…珍しいっすね、朝早いなんて」
『そうかな…?ちょっと眠れなくて。…ほら、今日がその日でしょ?』
「…そうっすね。今日コロシアイが行われないと、皆死んでしまうっすから」
『天海君は冷静だね。見ていて感心するくらい冷静だ』
「そういう名前さんこそ意外と落ち着いているじゃないっっすか」
『私が?どうして?』
「早朝から一人で図書室なんて危ないと思わないっすか?殺されると恐れていてわざわざ行くなんて異常っすよ」
『…はは。手厳しいね』
「こういう性格なもんで」
『正確な指摘をありがとう』
「私的なことでもしてたんすか?」
『いや別に。私が本が嫌いだってのは周知の事実だけど。珍しく行きたくなる時だってあるものだね。何の理由もなく』
「…何の理由もなく?」
『…天海君、人の揚げ足取ろうとしてない?』
「そんなことは。むしろひとの命を投げ出そうとする人を止めに来ただけっすから」
『…どういう意味?』
「そのままの意味っす」
『それ、私に教えてはくれないのかな』
「どうして名前さんがここにいるのか教えてくれたら考えても良いっすよ」
『だから、言ったでしょう。眠れなくてふらふらと彷徨っていたら最終的にここに来た。誰も邪魔しない場所でゆっくりくつろげるから』
「その割には冷静っすね。名前さん、君は感心するほどに冷静だ」
『やだなぁ、真似事?』
「引用っすよ。…全然元気そうじゃないっすか。足元が思わしくないような歩き方だって眠そうな仕草だって一度もしていない」
『そう見える?天海君の勘違いじゃないの』
「朝早いのが珍しいって言ったじゃないっすか。いつも遅くに起きて遅くに俺たちと合流して、寝ぐせまでつけていた君がこんな早朝に、しかも元気そうにここにいるのは不自然だって言ってるんすよ」
『勘違いもここまでくると立派だね。天海君は私のことをまるで首謀者のように扱う』
「実際はそれよりももっと酷いっすよ。…名前さんももう分かってるはずっす。自分がこれから何をしようとしているのか」
『うーん、酷いなあ。どうして私のことを信じてくれないの?』
「笑顔で刃物を後ろに隠す女の子に信用できる子はいないっすから」
『………』
「それに肩も震えてるし」
『…やっぱり君ってよく分からない人だね。才能が分からないのに人のこと見透かしてる』
「その分、名前さん以上に周りからの信用は皆無っすけど」
『ねえ、一つ聞いていい?』
「何すか?」
『そんな見透かした人がなんで殺されると恐れていてわざわざここに来たの?それって異常じゃない?』
「…真似事っすか」
『揚げ足取りだよ』
「はっきり言うっすねぇ」
『その通りだもの』
「…別に俺は殺されることには恐怖を抱いていないっす。名前さんも生きるためにやってるんすよね?」
『そうだよ。だって死にたくないもの。…隠し扉、君も知ってるんだよね?ここにわざわざ早朝から来た時点で君も私もお互いを疑いあう関係になっちゃったわけだ』
「そうっすね。だから俺は止めに来たんすよ」
『……』
「ひと__俺の命を投げ出そうとする人を止めに来ただけっすから」
『やれやれ、それはただの抵抗か』
「自己犠牲に近いっすかね」
『…私は、殺すよ?天海君のこと』
「どうぞやりたければご自由に。俺は全力でそれを止めるだけっすから」
『止めた後は?』
「俺が名前さんを殺すっす」
『…ふふ。結局人間同じことしか考えてないんだね』
「そもそもこれは不毛な議論っすから。…もういいっすか?」
『いいよ』
「…」
『…』



                       ばいばい

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