刀剣乱舞


その本丸は閑散としている。襖は雑な手入れで所々に埃がこびりつき、他所で聞くところの和気あいあいとした雰囲気とは程遠く、子供は毎日暇そうに外を眺めてはため息をつき、大人も彼らの様子を心配しては変わらない現状に苛立っていた。

「戦もねぇ、外に出ることすらままならねぇ。なぁ、俺たちゃ何のためにここにいる」

 それに対してかけられる言葉は何もない。みな、一様に同じ気持ちを抱いていた。歴史修正主義者。自らの私利私欲のために歴史を変えんと欲する敵対勢力を討伐するために、刀の付喪神として呼び出された存在。それが刀剣男士である。人ではない彼らを統制するにはある程度の力を持った人間が必要だった。所謂審神者と呼ばれる人間は霊力を以て刀剣男士を呼び出し、育て上げ、歴史修正主義者への対抗勢力となっている。
 人の形を模しながら、元は刀。彼らには戦闘本能が存在し、本来ならば今すぐにでも外に出て敵を斬り捨てる所。実際にこの本丸には練度が高く他の本丸ではあまり見かけられない凄腕の刀が何振りも存在する。かつては審神者と共にただひたすらに敵を倒し、当時その地方では有数の討伐本丸として名をはせていた。
ただ、それも昔の話。

「何のため、か。籠の中の平穏を享受する。それが目的ではあるまいか」

 能天気な声が降りかかり、同田貫正国 は苛立たし気に青の羽織を身に着けた美丈夫を睨みつける。当の本人は平然と隣に腰掛け、眼前に広がる庭を眺めた。池に住む錦鯉は口をぱくぱくと開閉し窮屈そうに空を向き、周囲に植わっている盆栽は最低限の世話しかされず滑稽な形で横たわっている。
 みすぼらしい有様よな。そう呟いて男、三日月宗近は視線を横に滑らせる。
「そも、助けは要らぬと外の人間を突っぱねたのは我々よな。今更後悔しているのか、同田貫」
「不備の理由を問い詰めてみりゃ何も言わず刀解しようとしてきたのはあっちじゃねぇか。それを阻止出来たところで閉じ込めるたぁ、聞いてねぇっつうの」

 何度同じ愚痴を吐き続けたことか。面倒くさいと頭を掻き、やるせなさに同田貫は小さく呻く。

「そうさな。しかしこのままではじき霊力も尽きる。刀の本懐を遂げずして顕現が解かれるのも嫌なものよ」
「…今更何言ってやがる」

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