幼馴染み失格(振り)

▼概要
・沖一利
・主人公は二組
・一週間の期限で欲しいものを当てろ、というゲーム


いつものように朝から晩まで部活に励み、帰りに皆でコンビニに寄って、その後ふらふらになりながらも自転車をこいで家に到着。玄関の戸を開けるとそこには姉さんのものとは違う、橙色をした見慣れないスニーカーが脱ぎ捨ててあった。リビングから顔を出した母に訊ねる。

「誰か来てるの?」
「○○ちゃんが来てるわよ」
「え、○○?」

カズの部屋にいるから会って来なさいよ。そう言って母はリビングへ戻っていった。仕方なく俺は洗濯物を出してから自分の部屋に向かう。ご飯を食べてからにしたかったのだが母に逆らえるはずもなく、俺は素直に従った。

「ねえ、何やってるの?」
「あ、おかえり」

部屋のドアを開けてまず目に入ったのは○○が俺のベッドの上で仰向けになっている姿だった。むくりと体を起こして、彼女は伸びをする。どうしてこの人は人の部屋でこんなにもくつろいでいるのだろうか。母も母で勝手に部屋にあげないでほしい。年頃の男子と女子なんだぞ、一応。俺はため息をつき、鞄をそこら辺に適当に置いてから彼女のいるベッドのわきに座った。

「何か用?」

そう訊ねると、○○はふにゃりと笑って何となく会いたかった、とだけ言った。その言葉に一瞬どきっとしたがなんとか平然を装う。

「何となくって…学校でも会えるし、わざわざ家に来なくてもいいじゃん。それにもう夜遅いんだよ?」

壁にかかっている時計を指差して時間を教える。只今10時30分。○○はさほど気にしている様子はなく、ごろんとまたベッドに横になった。

「早く帰りなよ。おばさん心配してるよ」
「平気平気、お母さんには一利んち行くって言ってきたし」
「…俺たちもう高校生だよ?少しはさ、ほら、男の家に行くの控えたりとか、さ」
「へ、何で?私たち幼なじみだし、今更でしょ?」
「…まあ、そうだけど、」

○○の言う通り、俺と彼女は小さい頃からの付き合いで、家も隣じゃないが徒歩1分と近い。けれども、俺が言いたかったのはそういう事ではない。言ってしまえば俺は彼女の事が好き、なのだ。だから不本意に部屋にいられると、その、理性というものが…。

「一利、ゲームしよう!」

そんな俺の気持ちを余所に、○○は楽しそうな声で提案してきた。今からゲームしたら日付変わっちゃうだろ、と言ってやると彼女は起き上がり、頬を膨らませて首を横に振った。

「違う、テレビゲームじゃない」
「え、じゃあ何なの?」

俺の質問に彼女はにんまりと笑った。何か企んでいる時の顔。背中に冷や汗が流れるのを感じた。

「私の欲しいものをくれたら一利の勝ち」

さらり、と彼女は言った。

「期限は一週間。どう?」
「どう、て言われても…、」
「言っとくけど、一利に拒否権はないから」
「…何だよ、それ」

思わず顔をしかめると、彼女は俺の顔を指差して声を上げて笑った。変な顔ーっ!腹を抱えて笑い続ける。そんなに笑うなよっ!そう言うと彼女はごめんごめんと謝りながら溜まった涙を拭う。因みにね、と彼女は続けた。

「一利が負けたら幼なじみ失格ね」

何でもないもののように、極自然に彼女は告げた言葉。ガツンと頭を殴られたような感じがした。それって、どういう意味…?

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