舞台裏の主役(落乱)

▼概要
天女サマが嫌いって訳じゃないけど、喧嘩を売られたのだから買ってあげましょうか、な話。
鉢屋がなにかとでしゃばる。



「もし仮に私がやったとして、あなた方は私に何を望んでいるのです?謝罪すれば良いのですか?犬のように従順になれば良いのですか?」

学園内では、私があなたを害している事になっている。無論、そんな馬鹿げた事をした覚えはない。
あなたは、私が忍たま達と仲良くしていると気に入らないみたいだから。何事も自分優先でなくては気が済まないみたいだから。あなたの為に舞台を差し上げ、自分は袖に引っ込んだというのに。

「ああ、それとも、」

懐から苦無を取り出し、自らの首に宛がうと、周りの忍たまたちがざわざわと騒ぎ出す。

「私、という存在を消せば良いのでしょうかね?」

苦無を持つ手は固定したまま、張り付けていた笑みをさらに深くする。六年生たちは一層視線を鋭くさせる。その後ろで守られるようにして立っている天女サマが息を呑むのが見えた。この場を作り上げたのはあなただというのに、何故そんなにも驚いているのでしょうか。酷く、不愉快です。

「死ぬ覚悟なんて当にできています。ただ、心当たりなのは、状況が今一把握できていない事」

ふふ、と洩れてしまった笑い声を抑える事もせず。

「ねえ、天女サマ。こんな愚かな私にも理解できるように説明して下さいませんか?」

こてん、と首を傾げてそう告げると、天女サマはその顔を青ざめさせた。
あらまあ、なんて情けない。主役を演じるならば、それ相応に振る舞わなくてはいけませんよ?



○○先輩が自分の首に苦無を宛がった時、すぐに周りが騒ぎ始めた。ああ、大事になってきたなあ。俺は天女サマを盲目的に好いているわけではないけれど、流石に六年の先輩たちもやり過ぎではないかと思う。さっきから先輩たちの視線は鋭いままだし、○○先輩はにこにこと笑っているし。ふと顔を横に向けると、隣の級友も笑っていた。笑い方が○○先輩にそっくり。

「ちょっと、三郎、笑ってるの?」
「ん、だって、なあ?」

何が、と突っ込みたくなったけれど、何とか我慢する。お前の敬愛する先輩が危ないっていうのに。

「そうですよ。鉢屋先輩、笑い事じゃないですっ!」

三郎が連れてきたのか(だってさっきまでいなかったし)、三郎の隣にいた庄左ヱ門はすごく焦った表情をしていた。

「まあまあ、勘右衛門も庄左ヱ門も落ち着けって。もうすぐ面白い事が起こるから」
「え?」
「面白い事って?」

尋ねると、三郎は口許をにやりと歪めた。

「天女の転落さ」

tag: 小ネタ

ALICE+