**. 不安
「お前、ほんとに俺の事が好きなのか?」
告白された次の日、屋上で二人で昼ごはんを食べていると、突然阿部くんが意味不明な質問をしてきた。
「そうだけど、何でいきなり」
「あ、ならいいんだ」
…何だったのだ、今のは。
どうしたのか訊ねれば気にするな、と返されてしまう。自己完結してしまう阿部くんに少しイラッとした。
「…そんなに信頼できない?」
「いや、ちがくて、」
「だったら、何?」
じっと目を見れば、彼は観念したのかぽつりぽつり話し始めた。
「お前さ、よく花井や水谷と話してただろ?」
「あ、うん」
「そん時お前すっごく良い笑顔してたりしてたから、ほんとは花井とか水谷とかが好きなのかって」
「良い笑顔、してた…?」
「あ、ああ」
「…ほんと?うわあ、恥ずかしい…」
そう呟くと阿部くんは悲しそうな顔をした。私は焦って訂正する。
「阿部くん、違うの!花井くんや水谷くんには阿部くんの事について相談にのってもらってただけで…。阿部くんの話たくさん聞いて嬉しくて笑顔だったんだと、思う」
「…へ、」
阿部の顔が真っ赤に染まる。それにつられて私の顔も赤くなる。
「っ、名字、ごめんっ!」
突然腕を引かれ、阿部くんに抱きしめられる。
「不安だった、名字が俺から離れていきそうで、」
「…私が好きなのは阿部くんだけだよ」
「俺だって」
私を抱きしめている彼の手に力が込められる。私はそっと彼の背中に手を回して抱きしめ返した。
090713
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