04. 幸せはんぶんこ


昼休みの時間を知らせるチャイムの音。起立、礼の号令の後、すぐさま鞄の中を漁る。綺麗なビニール袋に包まれたタオルと昨日買った飴玉を持って立ち上がった。

「あれ、泉、どっか行くの?」
「七組に行ってくる」
「へえ」

何か珍しいなあ、と目を丸くしている浜田を一瞥して教室を出た。



七組の教室をちらりと覗く。名字が自分の席に座っているのを確認してから、教室の中へと足を踏み入れた。

「名字」

名前を呼ぶと名字は顔を上げて、俺の姿を見つけると首を少し傾げた。

「どうしたの?」
「ほら、これ」

そう言ってタオルを渡す。名字はそれを見て納得したようで、あ、そっか、と呟いた。

「別にそのまま返してくれても良かったのに、」
「そういう訳にもいかねえよ」
「そう?」
「そう。…あと、これさ、お礼に」

名字に飴玉の袋を見せると、こいつは目を丸くして、俺と飴玉を交互に見る。

「…へ?」
「これ、やる」
「え、ほんとに?」
「ああ」

頷くと、途端に名字は嬉しそうな表情を浮かべてそれを受け取った。

「食べてもいい?」
「どうぞ」

許可を求めてきたからそう言う。すると、名字は飴玉一つ取り出して包みを開いて口に含む。すごく幸せそうな表情。…何か、見ていて和む。

それからこいつはまた袋から一つ取り出した。もう一つ食べるのだろうか、とその様子を見ていると、飴玉を乗せた手の平を出された。俺は意味が分からず、その手をただ見ていた。

「泉にも幸せのお裾分け」

はい、と俺の手に落とされたそれ。なんだ、そういう事か。こいつに倣い、貰った飴玉の包みを開き、口に入れる。口いっぱいに甘酸っぱさが広がった。

「ありがとう、泉」

にこりと笑った名字。つられて俺も笑顔になった。


100503


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