05. からんころん
からころ。口の中の飴玉を転がしながら、甘いなあとかおいしいなあとか、幸せだなあとか、そんなことを思った。
昨日、泉から貰った飴玉は、私がすごく食べたいなあって思っていたものだった。あれって他のものよりもちょっと高くて、今月はもうかなりピンチだったから諦めていたんだけどなあ…。何で泉に、私が欲しいもの分かったんだろう。水谷には言った気がするから水谷経由かな。この前一緒に話をしていたから同じ野球部っぽいし…。
ふと、手の中にある飴玉の袋を見る。1日2粒までって決めた飴玉。だって15粒しか入っていなくて、すぐに無くなってしまうのは勿体無く感じたから。袋の中にはまだ11粒もある。そう思うと、何だか嬉しくなる。
「あ、その飴っ!」
不意に声がして、顔を上げると水谷が目の前にいた。
「それって名字が食べたいって言ってたやつじゃん!」
「うん、泉に貰ったの」
そう答えると、水谷を目をぱちぱちとした。あ、そういえば水谷はこの経緯を知らなかったんだっけ。
「あのね、一昨日の雨の日に泉にタオル貸したの。そしたらお礼にってくれたんだ」
「へえ、」
私の言葉に、だからかあ、と水谷は神妙な顔をして一人納得していた。どうしたんだろう、何か変な事を言っただろうか、と思い直してみても何も浮かばなかった。
水谷の態度に少し首を傾げると、水谷はそれに気づいたようで、何でもないよーとふにゃりと笑った。
「でさあ、名字は何で泉にタオル貸したの?」
「え、何でって…」
改めて尋ねられると、自分でも疑問に思った。
ずぶ濡れの泉を見て、あっ、て思って、気づいたら自分はタオルを差し出していた。いつもなら多分そこまで気にかけないのに、何であの時は…。
「…風邪引いちゃうって思ったから、かな」
強いて言うならば、理由はそれだ。でも、これ以上に何か違うものがある、そんな気もする。
私の曖昧な答に、水谷はそっかあ、とまた笑った。
「ねえねえ、その飴一つ頂戴」
「…駄目っ!」
伸ばしてきた手から守るように袋を抱え込む。そんな態度に水谷は一瞬目を丸くしたけれど、すぐに普段のふにゃりとした顔に戻った。
「あはは、やっぱり」
からからと笑いながら言われた言葉に、私は首を傾げるだけだった。
100509
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