06. 視線合致
次の授業は移動教室で、七組の前を通り過ぎた際にちらりと中を覗いてみた。
前の時間は数学だったのか、黒板には数式がびっしりと書かれていた。あれ、これ、うちのクラスじゃまだやってないぞ。七組の方が進み早いのか?というか、こんなのやるのかよ…。
少しうんざりしながら視線を教室の真ん中の方にずらす。
そういえば阿部たちいないなあ。そんなこと思いながらきょろきょろしていると、席に座っている名字の姿。かちり、と目が合う。
(あー、と)
こういう時どうすればいいのか困り、とりあえず手を上げてみた。すると名字も手を振ってくれた。その後、何か思い出したように鞄を漁り始め(前にもあったような…)、そこから取り出したのはこの前俺があげた飴玉の袋。その袋を俺に見せながら嬉しそうに笑った。
(うわ…っ!)
多分、本人はありがとうって伝えたかったんだろうけれど、あいつの笑顔を見た瞬間、電気みたいに何かがびりっと来て顔を背けてしまいそうになった。
今の俺、変じゃなかったか…?逸らしかけた視線を戻すと、名字はさっきと変わらずにこにこと笑っている。…大丈夫だったみたいだ。
「いずみー!」
不意に、廊下の向こう側から、田島の声が聞こえた。顔を向けると三橋と田島と、あと浜田が遠くで俺を見ていた。
「今行く!」
そう告げてから名字の方に向き直る。田島の声が聞こえたらしく、名字は苦笑気味に手を振っていた。俺も手を上げて返事をして、七組を後にした。
「泉、阿部たちいた?」
「いや、三人ともいなかった」
「じゃあ何で七組にいたんだよ」
「まあ、色々あって、」
「…てか、泉、顔赤くない?」
「…っ!」
田島に指摘されて慌てた。顔赤くなってるって…、どうりでさっきから暑いなあって感じていたんだ。というか何で赤くなってんだよ、俺!?
「泉、大丈夫かー?」
心配そうに浜田が見てきたけれど、今はそれどころじゃない。
俺、大変な事に気づいてしまったかもしれない…!
100705
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