春の良き日に
日差しは暖かく、頭上の桜は満開で小鳥たちは楽しそうにさえずる。
「今年の忍装束は萌黄色なんだね」
遠くで列になって歩いている萌黄色を眺めながら、緑色の装束姿の少年は言った。
「同じ緑色、僕らとお揃いだね。ほら見てよ、あの子たちの装束、まだ汚れも傷も付いてないよ」
「ああ…、何だか初々しいな」
楽しそうに話す彼の隣で、同じように緑色の装束を身にまとった彼の級友は微笑ましそうに目を細めた。
二人の視線の先にいる子どもたちは先日入学した一年生。真新しい装束を身に付け、未だ少し緊張した面立ちの彼らは、自分たちにはない白さを感じさせる。
「僕にも君にもこんな時期があったんだよなあ」
「確か、お前初めて会った時から落とし穴に落ちててさ…、あれには驚いたけど、」
「あーあー、そんな事あったかなあ?」
「過去は消そうとしても消せないもんだぜ」
「…もう、穿り返さないでよ!」
はは、腹を抱えて笑いだした級友に、少年は頬を膨らませた。
「笑いすぎだって!」
「ごめんごめん。……俺たちが入学して、もう三年も経つのか」
「そうだね。…ねえ、」
「ん、何だ?」
「僕たちが、あの子たちを守っていこうね」
「…ああ」
忍者という、決してきれいではない世界に足を踏み入れてしまった彼らがあの白さを失わないように――。少年たちは心の中でそう固く決意した。
はるうらら。辛く険しい道が示されたあの子どもたちは、今、何を思ってここにいるのだろうか。
暖かな風が吹き、桜の花びらが舞い散る。
少年の長い髪がふわりと揺れた。
100403
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