ファーストコンタクト
名字名前という少年は遠い遠い山の、奥深くにある小さな村の出身である。
彼は村の長の孫息子であり、多くの知識と経験を得るべく遠く離れたこの忍術学園へと入学させられた。だが、彼の育った場所は旅人は勿論、山賊でさえも訪れない為外界との交流は乏しく、また当然の事ながら彼は至極人付き合いが苦手であった。
そんな彼は、今、とても困惑していた。
忍術学園に入学して一日目。場所は忍たま長屋の自室。
目の前に座っているのは、彼とお揃いの萌黄色の忍装束を着た少年。彼と少年の出で立ちは同じである筈なのに、ただ一点だけ、少年のその首には真っ赤な蛇が巻き付いていた。
「………」
名前がじっと見ているのにも関わらず、少年は首元の蛇と戯れている。
こういう時ってどうしたらいいんだろう。対人スキル皆無な名前の内心は焦っていた。何か声をかけなければ、そう思っても何を言えばいいのか分からない。普段あまり気にしていなかったが、この時だけはあの閉鎖的な環境で育った事を悔やんだ。
「………、」
はじめの挨拶は初めまして、かな。そしたら自分の名前を言って…、あ、そういえばこの子の名前知らないなあ。何て名前なんだろう。えっと、じゃあこの子の名前聞いて、それで宜しくってして…。
脳内で必死に考えながらふと前を見ると、赤い蛇がこちらを興味深そうに見てきた。それにつられて少年もゆっくりとこちらに視線を移す。
「……あ、」
彼の整った顔を見て、名前は思わず声を洩らしてしまった。
その色素の薄い目がじっと見ている。どうする事もできず、名前も少年を見つめ返した。
「…君は怖くないの?」
唐突に少年が呟いた。
「……え?」
「皆、ジュンコを見た途端に怖がるから」
そう言って、赤い蛇の頭を撫でた少年。訳が分からず名前は首を傾げた。
「…ジュンコは蝮なんだ」
「……蝮?」
「うん、そう。毒を持ってる」
「……でも、きれいな子だね」
そう言った名前に少年は目を丸くした。そしてすぐに目を細めて嬉しそうに笑った。
「君となら仲良くできそう」
「……?」
「僕は伊賀崎孫兵って言うんだ。君は?」
「名字名前」
名前が名前を言うと孫兵はまた嬉しそうに目を細めた。
彼の首元にいるジュンコも、歓迎の印か、名前の頬へ擦り寄ってきて、名前は思わず笑みがこぼれた。
100418
← □ →