01.恋をしました


何だか左門がおかしい。

「…はあ、」
「どうした?」
「ん、いや、何でもないっ!」


最近ずっとこんな調子だ。
ぼーっとしていると思ったら突然キョロキョロとし始めたりするし、ため息を吐いたり、急に百面相したり。その動きは忙しない。
あの決断力は無駄にある左門が、である。
同じ組である作兵衛や三之助を初めとする三年生たちは、何か変な物を食べたのではないか、熱があるのではないか等、原因を探ってはいるが解らずじまい。

今日も左門は縁側に座って物思いにふけっている。
隣に座っている作兵衛は心配そうに左門を見遣る。初めこそは迷子にならなくていいと思ったが、今の彼は彼らしくなくて何だか嫌だった。できることなら手助けしてやりたいが、如何せん原因が解らない。どうしようか、と作兵衛は空を見上げた。


ガサ、と突然前方の草むらが揺れた。
二人が反射的に視線を移すと、草むらから出てきたのは桃色の忍装束。くのたまであろう彼女はこちらに視線を遣ると目を丸くした。

「あれ、左門くんだ」

言葉を発すると共に笑顔になる彼女。
何だと作兵衛が首を傾げていると、左門が顔を真っ赤にして勢い良く立ち上がった。

「名前先輩…っ!」
「ねえ左門くん、ここら辺で毒虫見なかった?」
「いや、見てないですっ」

名前先輩と呼ばれたくのたまはにこやかに尋ねた。対する左門は顔を赤くしながらもハキハキと質問に答えている。
このくのたまと知り合い?というか左門、何かさっきよりも元気になってねえ?
訳が分からず作兵衛は不思議そうに二人を交互に見た。

「先輩は何してるんですか?」
「生物委員会に頼まれて毒虫探しの手伝いさ」
「お疲れ様です!」
「あはは、ありがとう。でもまあ、もう慣れちゃったけどね」

トントンと進んでいく会話を耳に入れながら、この違和感を解析。

ん?んん?
これって、もしかして…!

話が終わったのか去っていく彼女の後ろ姿を見つめている左門を見て確信する。
ああ、やっぱり、

「…左門」
「ん、何だ?」
「お前さ、あの先輩好きだろ?」

そう聞けば、赤みの引いてきた顔が再び真っ赤に染まった。こく、と左門が頷くのを見て思わず脱力してしまう。
俺たちが今まで悩んでいたのは何だったんだ!
もはや乾いた笑いしか出てこない作兵衛が見えてないのか、左門は幸せそうに笑った。

「名前先輩は一等素敵なんだ」



その後、作兵衛は左門に彼女の素晴らしさについて延々と聞かされた。
恋煩いも一種の病気という事で。


100402


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