02.目が合いました
つい昨日分かった事だが、左門はとあるくのたまに恋をしているらしい。
そのとあるくのたまとは、名字名前という二つ上の、つまりくのたま五年の先輩。何でも委員会に行く途中で迷子になっていた時に助けてもらって、そこで惚れたとか何とか。(それならいつも迷子になってる左門を探している作兵衛にも惚れる要素があるじゃん、と三之助が呟いたがそれは何事もなかったのように無視された。)
「じゃあ、左門がおかしかったのは恋煩いのせいって事?」
朝食を食べながら、昨日の件について作兵衛が報告をし終わった後、孫兵は不満そうに言った。
「僕たちが今まで悩んでいたのは何だったの?」
「それ、俺も昨日思った」
「まあまあ、病気とかじゃなくて良かったじゃない」
「恋煩いも病気みたいなもんだろ」
「そうだね、でも」
皆口々にそう呟いてため息を吐いた後、一斉に左門の方へ目を向けた。
会話に加わらず食事に集中していた左門は五つの視線に気づくと、どうした?と首を傾げた。
「あの左門が、ねえ」
「まあ、な」
「恋だなんて、」
「しかも先輩とか」
「まあ、本人の自由だと思うけどね」
「なっ…!」
それぞれの言い草に左門はむっと顔をしかめて、ガバッと立ち上がった。
「僕だって人間だっ!恋ぐらいする!」
拳を握って高らかに言う左門を五人は慌てて席に着かせる。
朝早い時間だとはいえ食堂には他の忍たまもいるわけで。そんな中大声なんて出したら、内容も内容であるため格好の注目の的になる。今もこちらをちらちらと見ている忍たまが数名。
「お前はバカかっ!注目浴びるだろうが!」
「だって皆僕に失礼な事言ったじゃんか!」
「だからって立ち上がって大声で否定する事ねえだろう?!」
「むーっ!」
「ちょっと!作兵衛も左門も落ち着いて」
数馬に制止の言葉をかけられ大人しくなる二人。 未だに左門は不満そうに頬を膨らませている。悪かったと謝るがその状態は変わらず。
どう機嫌をとろうか、五人揃って首を傾げていると、楽しそうな声と共に数人のくのたまが食堂に入ってきた。左門たち六人の席の側を通る時、その中のくのたまの一人がこちらに視線を遣った。カチリと目が合う。
「おはようございますっ!」
突然左門が立ち上がって挨拶をした。どうしたんだと不思議がる四人、一人作兵衛はああ、と呆れたようにため息を吐いた。
そんな五人の様子に気を留めず、そのくのたまは左門の挨拶に笑顔で返す。
「おはよう、左門くん。今日も元気だね」
「はい、元気です!」
「そう、良かった」
離れた所で名前ー、と彼女の友人が呼ぶ声が聞こえ、くのたまは会話もそこそこに友人の元へ行ってしまった。
へたりと椅子に座り込む左門。先程とはうって変わって顔を赤くさせ嬉しそうにしている。そんな彼と名前の後ろ姿を交互に見遣る。
あの人か…、と藤内が呟いた。
「くのたまにしては優しそうだったね」
「そうだぞ、名前先輩は優しいんだぞ!」
「お前は黙っとけ」
いつものように騒ぎ出した左門の頭を作兵衛が叩く。
「ありゃ敵は多そうだ」
騒ぎ出した仲間たちを眺めて、三之助はぽつりと言った。
100402
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