05. 胸が張り裂けそうです
「作兵衛っ!」
突然の大声に、自室で昼寝をしていた作兵衛は飛び起きた。何事か、と入口の方を見ると、そこには左門の姿があった。
「大変だ、作兵衛、大変だ!」
「分かったから落ち着け!」
頬を赤くさせ興奮気味の左門を落ち着かせる。頬の赤みが治まってきたところで、ようやく作兵衛は尋ねた。
「何がどうしたんだ?」
「作兵衛、聞いてくれ!」
左門は両手を大きくばたつかせながら、作兵衛に詰め寄るように言った。
「最近、名前先輩を見かけると胸がぎゅーってなって、先輩とお話しできると頭がふわふわした感じになって、先輩が僕に笑いかけてくれた時には体中が熱くなるんだ。でも、先輩に会えなかったりお話しできなかったりするとすごく寂しくて寂しくて仕方ないんだ。今までこんな風になった事なかったのに。何で、何でなんだ?僕は何かの病気なのか?」
一気に捲し立てた左門は顔を真っ赤にさせて、ぜえぜえと荒い呼吸をする。そんな左門に作兵衛はぽかんとしているだけだった。
「何で、て…。そりゃあ、お前、先輩の事が好きだからだろ」
あっけらかんと作兵衛は言った。
「好きだから幸せな感じになったり寂しくなったりするんじゃねえの?」
「恋ってそういうものなのかっ?」
「んな事俺に聞くなっ!そういうのは孫兵にでも聞けよ。あいつロマンチストだから」
これまた幸せな問題だな、と作兵衛はため息を吐いた。
作兵衛の言葉を聞いた左門は俯いたまま考え事をしていたが、やがて、そうか…、と呟くと顔をがばりと上げた。
「決めた!名前先輩に告白しに行ってくる!」
「……はあっ?!」
拳を握り勢い良く立ち上がった左門に作兵衛は目を丸くした。
「今までの流れで、どうやったら告白に辿り着くんだよ?!」
「僕は名前先輩がすごく好き、だから告白する!」
健闘を祈っていてくれっ!左門はそう言うと部屋から飛び出していった。
残された作兵衛はその姿を見送りながら、再びため息を吐いた。
「…慰めんのも俺かなあ、」
「名前先輩、どこにいるんだろう?」
左門はきょろきょろと見回しながら歩き回った。
僕が告白したら先輩はどう答えるのかな。ああ、早く先輩に伝えたいなあ。
そう思いながら名前の姿を探していると、視界の端に桃色が映った。
(名前先輩…!)
早く会いたい…!そう思う気持ちが進む左門の足を速くした。
そうして辿り着き、そこには――、
「あっ……」
左門の目に映ったのは楽しそうに会話をする名前と青紫色の忍装束だった。
今までの浮ついていた気分は急降下。すぐにでも泣き出しそうなのを必死に我慢して、左門は名前たちを見た。
あの五年の先輩は自分よりも背も高いし顔も整っているし、忍者としての実力だって十分にある。あの人は名前先輩と同い年、でも僕は年下。それに、何より、あの二人はすごくお似合いで――。
「…名前先輩、」
ぽつりと呟いた後、名前たちに背を向けて走り出した。
100414
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