04. 幸せに感じました


ある日、左門は忍たま長屋前を散歩をしていた、筈だった。

「…あれ?」

今日は作兵衛も三之助も委員会。部屋に居るのも何なのでそこら辺を散歩しようと思ったのだが、気付いたらくのたま長屋の前まで来てしまっていた。
いつの間に…?左門が首を傾げていると不意に自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。くるりと後ろへ振り向くと、名前が少し驚いた様子で立っていた。

「左門くん、ここくのたま長屋の前だよ。どうしてここに?」
「いつの間にかここに来ていました」

左門の言葉に名前はああ、と納得した。彼は方向音痴だった、と。

「くのたま長屋は色々仕掛けてあるんだから、迷い込まないようにしないと…、」
「?」

名前が一応注意するが、左門は不思議そうに首を傾げただけだった。
まあ、仕方ないか。左門のその様子を見て、名前は苦笑した。

「あ、そうだ」
「どうしたんですか?」
「左門くんは今、暇?」
「はい、暇ですけれど…?」

左門がそう答えると、名前は嬉しそうに笑って左門の手を取った。突然の行為に左門の体が硬直するが、そんな事はお構いなしに名前はぐいぐいと引っ張っていく。

「名前先輩っ?!」

思わず出た声は思ったよりも上ずっていて恥ずかしかった。
名前を呼ばれ、名前はくるりと振り返るとにこりと笑う。

「おいしいお団子があるの!左門くんと一緒にどうかなって」
「お団子、ですか?」
「うん、駄目かな…?」

しゅん、となった名前に左門は慌てて返事をする。

「僕も先輩と食べたいです!」

左門の返事を聞くと、名前は良かった、と顔をほころばせた。



手を引かれたまま、たどり着いたのは名前の部屋だった。
ちょっと待っててね、と言って名前は部屋の中へ入っていた。左門は憧れの先輩の部屋を前に緊張する。

(先輩の部屋にちょっと入ってみたい、かも…、でも女子の部屋に入るって男としてどうなんだろう…?)

やがて団子を片手に部屋から出てきた名前は、百面相をしている左門を見て首を傾げた。

「何やってるの?」
「な、何でもありません!」



再び手を引かれて次に到着したのは食堂。茶を用意してから、向かい合うように席に着いた。

「さあ、どうぞ」

差し出された団子を受け取り、一口食べてみる。団子の甘さが口いっぱいに広がり、思わず頬が緩んだ。

「すごく、おいしいです!」
「でしょ?私、ここのお団子大好きなんだ」

そう言って名前も団子を一つ手に取って食べ始める。幸せそうな名前の表情を見て左門も幸せな気分になった。
今度お土産に買ってこようかな…。そう思いながら食べていると、ふと名前と目が合った。

「左門くんと一緒に食べられて嬉しいな」

にこりと笑ってそう言った名前に、左門は顔に熱が集まるのを感じた。


100407


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