01.
透明な水に墨を一滴落としたように、波紋が広がり、それは少しずつ、確実に侵食していった。
先日、この忍術学園にお手伝いさんとしてある女性が雇われた。と言っても、彼女は突如上空に現れて、そのまま忍術学園に落ちてきた。未来から来たと言う彼女に他に行く当てもなく、応急処置として学園に置いておく事になっただけ。別に彼女が有用だったからではない事を断っておこう。
彼女――忍たま達が天女サマと呼んでいるその人が来てから学園は狂い始めた。
忍たま達は鍛練も忘れ天女サマを構い、くのたま達はその姿を見て嫉妬し。そして、私の隣にはある人物が居座るようになった。
「伊賀崎は暇人なのか?」
「いえ、厄介事に捲き込まれたくないので」
そう言い切って、伊賀崎は私が用意した煎餅を一枚手に取った。
「名字先輩はこういう事に関しては徹底傍観じゃないですか」
「まあ、そう言われるとそうだね」
「つまり、先輩の側にいれば安全、という事です」
淡々と理由を述べ煎餅を一口かじる伊賀崎を横に見て、私は一つ嘆息した。それ、私が用意したんだけどなあ。そう思いながら、自分もまた一枚手に取る。
「先輩」
「ん、何?」
「…何でもありません」
ふい、と伊賀崎は顔を背けた。
彼はよく分からない。けれども、一緒にいて面白いとは思っている。
120422
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