04.


「伊賀崎は死ぬ事にこだわりある?」

唐突にそう尋ねてみれば伊賀崎は首を傾げた。

「こだわり、ですか?」
「うん」
「そうですね…」

伊賀崎は顎に手を当てて考える。やがて答えが見つかったようで顔を上げた。

「ジュンコの毒で死ねたら本望ですよ」
「伊賀崎らしいなあ」
「名字先輩は?」
「ん、私?私は死にたくないよ」

そう言い切れば、伊賀崎はしかめっ面をした。

「…先輩、その問いにその答えはないと思います」
「まあまあ、いいじゃない」
「はあ、」

伊賀崎は呆れたのか、溜め息を吐くと饅頭を一つ手に取った。因みにこの饅頭は伊賀崎が町に行ったお土産に買ってきてくれた物だ。更に言えば、私は饅頭よりも煎餅のほうが好きだったりする。

「あ、」
「どうしたんですか?」
「愛する人と心中なら、死因は何だっていいよ」
「…何ですか、いきなり」
「さっきの付け足し」

そう言って笑ってやれば、伊賀崎は顔を赤くした。何故君が赤くする必要がある?

「伊賀崎、どうしたんだ?」
「…思わせ振りなことは言わないで下さい。心臓に悪いです」
「何か変なこと言った?」
「……もう良いです」

伊賀崎は一つ嘆息して立ち上がった。目でその動作を追う。

「今日はもう帰らせていただきます」

怒った風でそう告げて、伊賀崎は背を向けて駆け出した。
今日の伊賀崎は少し変だった。


120422


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