11.


「天女サマ、死んじゃったね」
「そうですね」

いずれは殺してしまうのだろうと思っていたけれど。くのたまの誰が止めを刺すのかなあと思っていたら、あらまあ、びっくり。忍たまの内の一人 が苦無で天女サマの首元を切ってしまった。

「全く、予想外の出来事だ」
「忍たま側から出てくるとは思っていませんでした」
「伊賀崎は相変わらず淡々としているなあ」
「名字先輩だってそうじゃないですか」
「まあね」

何でも彼は天女サマに友人を取られたとの事。 天女サマが血溜まりに倒れ伏した後、彼はかつ ての友人たちに向き直り、笑いながら自らの首に苦無をピッと引いた。そうして倒れていく身体。友人も忍たまも、くのたままでもが唖然として見ていた。

「天女サマもさ、早く学園から出ていけばこんな事にならなかったろうに」

くのたまたちが天女サマいじめを始めた辺りから不穏な動きはあった筈。学園を出て町で暮らすとか、こんな終末を回避できる道は確かに用意されていたのに。守ってくれる忍たまたちに甘えた結果がこれ。殺さなければならない存在ではなかったけれど、選択を誤った彼女が悪い。

一方、天女サマを殺めた忍たまはどうだろうか。
天女サマに友人を取られたと言っていたけれど、天女サマの所に行く友人たちを呆然と見ていて、それでいて寂しいとか友人を取らないでとか。彼は離れていく友人たちの後ろを追いかけたのだろうか。寂しい、側にいて、と彼らに 自分の気持を告げたのだろうか。何もしないまま、ただ寂しい寂しいと喚くのは筋違い。結局、友人たちは自分を見てくれないからとその盲愛対象を排除してしまった訳だけど、何だかすごく理不尽じゃないか。

忍たまも天女サマに構いすぎだったし、くのたまも普通の小娘相手にやり過ぎだったと思う。忍者の三禁はどうした?嫉妬する時間があるなら、自身を磨いて奪い返すとかすれば良かったのに。

皆みんな、自分の事に必死で。周りを見渡せば回避策はそこらに転がっていたよ?ああ、残念。

「先輩はそう言っていますけど、」
「ん?」
「そしたら、こうして傍観しているだけだった僕らの立場は?」
「卑怯だけど害を被らない」
「質が悪いですね」
「はは、違いない」

伊賀崎の言葉に笑いながら、用意しておいた煎餅に手を伸ばす。バリッと一欠片かじって咀嚼。ん、うまい。隣の伊賀崎がじっと見ていたから一枚あげた。

「…名字先輩」

未だざわめている校庭の方を眺めていると、不意に伊賀崎が名前を呼んだ。顔を隣に移す。カチリ、と視線が合わさった。

「僕がもし、あの天女サマの取り巻きになっていたら、先輩はどうします?」

相変わらず無表情だこと。そんな事を思いながら、ぐるぐると思考巡らす。んー、そうだなあ、

「伊賀崎を監禁して、私の事しか考えられなくしてからジュンコの毒で心中」

どう?にやりと口元を上げて告げると、伊賀崎は嬉しそうに目を細めた。

「いいですね、それ」

私がいて伊賀崎がいて。自分が幸せなら、それでいいのです。自分本位ですから。


120422


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