140字ssと書きかけ



140字前後の文章と
書きかけで止まった中途半端な文章。
既に短編になってるのもあります。

密室

(文アル/堀・乱歩)
たっちゃんと乱歩さんの話。ほぼ1年放置。もうどこに着地させるつもりだったか思い出せない…。

※夢小説ではありません

もう一度試してみる。……やはり開かない。
密室という言葉が頭をよぎる。彼が好みそうな言葉だ。

「乱歩さん、何かしました?」

ゆっくりと振り返り、そう訊いてみる。この時ばかりは、笑みを浮かべて頷いてくれることを期待した。悪戯ならそれでいい。彼が悪戯好きであることはわかっているし、自分が揶揄われる対象であることも充分わかっている。
しかし、ダンボールを抱えたままの乱歩は首を左右に振った。嫌な汗が背中を伝うのがわかった。
***

「堀さん、少しよろしいですか?」

乱歩に声をかけられ、堀は一歩後ずさった。多少警戒するくらいは許してもらいたい。堀の反応が面白いのか、苦手な話をされて逃げ出したくなったことが何度もあるのだ。
爬虫類図鑑を持って来られるのは特に困る。蛇はどうしても駄目だ。一度ふらっとなって倒れかけてからは、さすがに反省したのか図鑑を見せてくることはなくなったが、グロテスクな話をしてくるのは相変わらずだ。

「そんなに警戒なさらなくても……。司書さんから資料を運ぶよう頼まれまして、手伝ってもらえませんか?」
「資料、ですか」
「ええ、かなりの量があるみたいで。手が空いているなら、お願いしたいのですが」

乱歩が嘘を吐いているようには見えなかった。それなら、手伝いを断る理由もない。堀はこくりと頷いて引き受けた。

資料室は図書館の中でも人があまり立ち入らない奥まった場所にある。部屋の中は少し埃っぽい。窓から差し込む光に照らされ、部屋を舞う埃がはっきりと見えた。
資料室というからには貴重な資料もあるだろうに、きちんと管理されているのだろうかと少し不安になるが、もしかしたら名ばかりで実際は物置きがわりなのかもしれない。
背後からバタンと大きな音がして、堀はびくりと振り返った。開けっぱなしにしていたドアが閉じたらしい。

「どれでしょう?すぐに見つかりそうですか?」
「窓際に置いてあるダンボール3つとおっしゃっていましたから、それですね」

堀はけほけほと小さく咳き込んだ。見つかったのなら早く運び出してしまおう。

「おや、大丈夫ですか?」
「ちょっと埃っぽかったので。これくらい、大丈夫です」

乱歩がダンボールを2個持ち上げる。堀は残った1個を抱え、ドアを開けようとした……が

「……えっ?」

思わず声を出してしまう。がちゃがちゃと音が鳴るばかりでドアは開かないのだ。入ってきた時のことを思い返すが、鍵はかかっていなかった。そもそも鍵がついていないドアだ。
ダンボールを持っているからかもしれない。床に置き、気持ちを落ち着けて再度試してみるが、やはり音だけが虚しく響いた。
開かないドア……密室という言葉が頭をよぎる。彼が好みそうな言葉だ。

「乱歩さん、何かしました?」

ゆっくりと振り返り、そう訊いてみる。この時ばかりは、笑みを浮かべて頷いてくれることを期待した。悪戯ならそれでいい。彼が悪戯好きであることはわかっているし、自分が揶揄われる対象であることも充分わかっている。
しかし、ダンボールを抱えたままの乱歩は首を左右に振った。嫌な汗が背中を伝うのがわかった。

「開かないのですか?」

乱歩もダンボールを置いてドアに近付く。何度かがちゃがちゃやった後に首をひねる。

「どうやら閉じ込められたようです」

真面目な顔で、しかしどこか楽しむようにそう言った乱歩を前に堀は小さくため息を吐いた。

「閉じ込められた?誰にですか?」
「ああ、いえ、その方が面白いのですが、恐らく建て付けの問題でしょう。そういえば、司書さんがそんなことを言っていたような気も……」

ALICE+