どこに連れて行かれるのかと思ったが、何故かホテルでもタクシーでも何でもなく、俺は少し歩いた路地裏に連れ込まれただけだった。表の店の光が漏れて地面がピンクに照らされている。下手したら人着いてきてんぞ……。
ドンと突き飛ばされ背中がコンクリートにぶつかる。うえ……スーツが……。
痛みと羞恥で思いきり桐生を睨むが、桐生は今度こそ怒っているようだった。
「錦。これ誰の臭いだ」
スンスンと俺のスーツを嗅いでいる。
「あぁ? んなの知らねー……あ」
アレか。今日アニキにジャケットを押し付けられたときだな。タバコと、よく考えれば香水が混じったような臭いが染み付いていた。
「浮気か」
桐生は胸元を犬のように嗅いでいたが、そう低く唸ると俺の喉笛に一度がぶりと噛みついた。
「う"っ……」
そのまま舌で喉仏をグリグリと押され、咳き込みそうになる。
「ちげえよ……浮気なんてこわくてぜってぇできねえよ」
じゅ、と音がして桐生がやっと俺の首から口を離した。ようやっと目が合う。桐生は――桐生は暗闇とピンクのライトで夜に霞んで、さっきまで俺を舐めていた唇だけがてらてらと光っていた。
先ほど嫌というほど手の平に押し付けられていた熱を思い出す。
思わずそっと太ももを寄せると、先ほどよりもずっと勃ち上がっていた。……熱い。
「……、」
桐生はぶるっと一度身体を震わせた。そのまま今度は口にがっつくようなキスをしてくる。
かわいいもんじゃなくて、本当にこのまま食べられるんじゃないかというキスに、俺の息も熱く荒くなっていく。脊髄に突き抜けて、そのままちんこがしゃぶられているんじゃないかと思うくらい気持ちいい。
桐生のキスがうまいのは正直癪にさわるが、教えたのは俺だと思えば誇らしいってもんだ。褒めていいぜ。
ただ、息が続くかと聞かれると、続かない。なんせ俺が鼻で吸った酸素も桐生が肺に入れている。そりゃ無理だ。俺はトン、トンと桐生の胸を叩いた。ややあって、ようやく口が離される。
俺は肩でぜぇ、はぁ、と呼吸をしているのに、桐生はそのままのケロッとした顔でこちらを値踏みしている。……くそ。人の酸素全部取りやがって。
息がまだ整わないうちに、桐生は俺のシャツのボタンを外していく。……これも最初のうちは引きちぎられた。
次の日俺がブチ切れてボタン付けを命じたが、それもやり直しになった。……とにかく、それに懲りたらしい。今はちゃんと外してくれるようになった。……褒めていいぜ。
桐生は一通りボタンを開け終えると、脱がすでもなく、そのまま開いて左の乳首を舐め始めた。
これに関しては、恥ずかしさしかない。俺は、あまり感じない。……逆に桐生は感じるみたいだけど。
ただ、舐めたきゃどうぞって感じで、吸ったり舐めたり忙しい桐生の頭を抱えて、頭のてっぺんにキスしていた。
桐生はチラッとこちらを見上げると、やっぱりか、という残念そうな顔をしていた。感じてるフリをするのもなんか今更だと思ってしまう。
桐生はそのまま諦めて今度は俺のバックルを外そうとしている。お返しに俺も散々触ってほしかったであろう桐生の股間をグリグリと擦ってやった。
何を思ったのか、急に桐生の手元が狂ってファスナーが壊れた音がした。……こいつ。
「おい、いま、ブチッていったよな」
「……」
桐生は無言で俺に口づけてきた。その手には……その手には乗らない……。
でもまたあの脳天に突き抜けられるようなキスをされて、頭の奥がぼんやりしてしまう。顔の温度が上がっているせいか、何でもないのに鼻水が垂れてくる。
「ンッ……はぁ、はぁ……覚えとけよ」
ようやく離された頃にはそれしか言えなかった。……つくづく情けない。
「にしき、足上げろ」
桐生はカチャカチャと自分のベルトも外すと、まだ腰に引っかかったままの俺のズボンに手をかけながらそう言った。
「結局ここでやんのかよ……」
「……待たせたお前が悪い」
というか49(至急)ってコレかよ……。
俺は大人しく右足だけそっと上げた。誰も来ませんように。誰も来ませんように。
俺の右脚を抱えた桐生がそのまま自分の前を寛げると、さんざん俺を待っていたらしい凶器が顕になった。……毎回思うけどコレ俺の中に入ってるんだよな。どういう仕組みなんだ……。
「もう無理だ。入れるぞ」
そんなこと言われなくても、こっちだって散々待ってんのに。口に出せないのは、俺だ。
桐生がすっ、と腰を落としてぬるぬる滑る先で俺のアナを拡げようとしている。何故かわからないけど、この瞬間が一番恥ずかしくて、胃の中から全身に熱いのか冷たいのかわからない感覚が広がっていく。
「ッぐ、あ……」
なんでこんなに硬いんだ……なんでこんなに。
少し考えればわかる疑問の答えが言葉にならないままビリビリと身体を駆け巡る。
すっかり俺のナカも桐生専用に作り替えられていて、ただ入ってくるだけなのにイイところに当たって気持ちよくなってしまう。
きっと快感を逃がすのが下手なんだろう。いつも挿れられたら全部口に出てしまうのに、こんなところではそれも叶いそうにない。チラ、と見ると向こうの方で通りは明るく白や黄色の光を放っていた。眩しくて、目が焼けて桐生が見えなくなるのが嫌で、すぐに目を逸らす。俺は仕方なく口を手で覆った。
それに気づいた桐生が更に俺の右脚を抱えあげて、角度を変えて深く挿してくる。
「あっ……ばか、バカバカッ……ああっ」
ばか、ばか、と繰り返す俺を満足そうに桐生が見つめている。その目の中に映る小さな俺はぐちゃぐちゃに泣いていた。
耐えきれず左脚がガクガクと崩れ落ちそうになるが、桐生が抱えあげて口づけてくる。
桐生はこんなに余裕そうなのに。俺ばっかり。俺ばっかり、こんな、喘いで。
口づけたままのその口で、桐生が はあ、と大きく息を吐き、そのまま、いく、と口元を動かした。
ナカを抉るスピードが少し落ち着いて、俺は満足感で既に一度イっているような感覚になった。中に出してほしい。眼の前がスパークしてキスされている筈の口から甲高い声が漏れた、気がする。なけなしの脳みそを回して、コクコクと頷くことしかできなかった。
ぎゅ、と一段と深く繋がったとき、ナカで熱いものが溢れた。
桐生は小さく痙攣して動きが止まってしまうから、今度は俺がたくさんキスをする。
う、と一言短く呟くと、目の前の上がっていた肩がゆっくり深く落ちた。
桐生は壁に俺を貼り付けてふーっ、ともう一度深く息を吐く。俺の息もようやく落ち着こうとしていた。
「おさまらねえ」
「……いや、知らねえよ!」
「……」
「脚死ぬから抜け」
桐生のモノはまだナカに入ったままだ。
チッ、と桐生が舌打ちをして、ズル、と何故かまた硬くなりつつあるものが抜かれた。
……くそ。中に入ってる。パンツは死ぬだろう。往来がこわくて慎重に身支度を整える。無論スーツのファスナーは閉まらない。ほんっとにゴリラ。
「もういい。お前がそんなつもりじゃなくても連れて行く」
「はぁ? あ、おい、引っ張んな!」
もたつく俺を連れて桐生が通りをふらつく。
「そっちにホテルはねーぞ」
そのつもりじゃねーなんて、誰も言ってねーよ。
神室町の街はギラギラと、今日も黒い空に鮮やかに光って俺たちをぼかしていった。