俺の出した精液を秋山さんはもろに口の中で受け止めてしまったらしく、ゲホゴホと小さく噎せると、急いでテーブルの上のティッシュを手に取った。俺はというと、フェラでイッた感覚にしばらく酔いしれていた。なんか……いつも一人でするときより、奥というか……後ろの方から出た気がする。
「ん。流石。苦くない」
秋山さんは話題の青汁を飲んだときみたいな感想を口にした。……飲んだことないけど、絶対に苦くない訳ない。
口元を拭い終えた秋山さんが、丸めたティッシュをゴミ箱に投げ入れた。
「大丈夫。まだいけるね?」
一瞬何のことを言っているのかわからなかったけど、秋山さんがまた俺のモノにちゅ、と音を鳴らしてキスをして気づいた。そのまま舐められただけで、完全に勃ち上がってしまう。……こんなこと。
呆気にとられていると、今度は秋山さんがベルトを外し始めた。ああ、かっこいいな。様になる男っていうのは。
「そんなに見て大丈夫?」
「……え?」
「いや……萎えたりしないのかなって」
ほんとだ。
「普通に……秋山さん格好良いなって、思ってました」
漏れた明かりだけで雑多なオフィスに佇む秋山さんは、騒がしい街の中の、暗い場所でこういう秘め事をするのが似合う出で立ちをしている。女の子なら、お金持ちだしイケメンだしダンディだしで、皆抱かれたいって、そりゃ思うんだろう。
「へえ。挿れられてみる?」
「……えっ」
「冗談だよ」
気持ちヨすぎるから、譲れないな。
そう笑って秋山さんはまたキスをしてきた。うっ俺のちんこの味……は、特にしないけど。目を瞑ってまた頭を秋山さんでいっぱいにしていると、秋山さんが俺の両肩を掴んだ。おそるおそる目を開けると、秋山さんは下を脱ぎ終えてちょうど俺に跨っているところだった。
「本当にいただいちゃって、いいんだよね」
目の前の秋山さんは、蕩けそうな声でそう言った。身体を何かが駆け巡って、下半身に血が集まるのがわかる。俺、これ、、抱くんだよね……?
「お願いします……」
か細い声でそう呟くしかできなかった。もうちんこの先には、秋山さんがくぷくぷと何かを押し付けている。
真剣な表情の秋山さんを見るのが辛くて、がむしゃらにキスをした。もう、心臓がもたない。バクバクと自分の耳からやけに大きい音が響いて、ソファーの背もたれが頼りなく思えた。
次の瞬間、秋山さんは、ず、と大きく腰を落とした。
「ア……ッつ!!」
キスしたまま秋山さんの口の中に向かって叫んでしまった。秋山さんは数度キスを中断すると、また深く、また深くと腰を進めた。
「あぁ……あ、イキそう……」
「、だめだよ。もう少し我慢して」
秋山さんの声が乱れている。ナカは熱くて溶けてて、我慢できる要素なんて全く見つからなさそうだけど、必死で精子を引っ込めようと努めた。
俺がイかないようになのか、しばらく秋山さんは動かなかった。何故か少し動くたびに前後にフラフラと上半身を揺らすから、思わず背中を抱き寄せてしまう。
「あっ……ああ、」
動いてないのに、秋山さんが喘ぎだす。俺は流石にイきはしないけど、秋山さんの甘い声を聴いて、麻薬みたいにハイになっていった。
「あ、秋山さん? 大丈夫ですか?」
「ンッ……うん、、だ、大丈夫」
本当は俺が大丈夫じゃなくなってきてる。
「秋山さん……抜きます?」
「いや、ちょっと……待って。ン……」
でも俺以上に、秋山さんの呼吸が荒い。喋るときにお互いちょっと動いてしまうのでもうつらそうにしている。なんか、、なんかヤバいのかな……。
「中村くん、お願いがあるんだけど」
「はいッ」
「……俺の口、全力で塞いでくれる?」
「? わ、わかりました」
もう秋山さんのナカに入って暫く経っているけど、ずっと溶けてなくなってしまいそうな感覚は続いている。俺は秋山さんに言われたとおり、秋山さんの口を両手で塞いだ。……もっとスマートな方法があるのかもしれないけど。
秋山さんがジロ、とこちらを睨んだ。いや、実際は睨んだ訳ではないと思う。次の瞬間、秋山さんが思い切り腰を持ち上げた。
「――ッ!! ―ッ!」
俺の頭もスパークした。口とは比べものにならない吸い付きで思い切りちんこを扱かれた気分だ。……何より、秋山さんは塞いだ口の中で絶叫していた。大丈夫なんですか、なんて聞く余裕もない。秋山さんがそのまま上下運動を続けたから息ばかり荒くなって、何も考えられなくなった。秋山さんの口を抑えている手は、秋山さんの唾液と涙でぐしゃぐしゃに濡れた。
俺は自分のちんこが今まで人生で体感したことないくらい硬くなってるのを、秋山さんの熱くて柔らかいナカを擦ることによって感じていた。
……そんなに長くないと思う。ふと、ひっきりなしに喘ぎ続ける秋山さんの空中で揺れていたちんこから、だら、と白いものが溢れた。次の瞬間、ナカの感覚がぎゅーっと締まって、何処に出そうとか、そういう余裕もなく、俺も秋山さんのナカで射精した。
お互い黙って息だけしていた。
「えっ、それって……出るもんなんですか?」
やっと俺の息が整ったかな、と思った頃、そっと秋山さんの口を覆っていた手を離した。
「……うるさいな。ちょっと黙ってよ」
秋山さんの声は掠れきっていた。……申し訳ないけど、また腰にクる。
「はー。こわいこわい」
そう言うと、秋山さんはまた腰をガクガク言わせながらそっと引き抜いた。……あっ、スースーする。
「あ、す、、すみません……なか……」
なんの許可も取らずに、中出ししてしまった……。て、いうか、中出しって……!! 人生のこんなに早い段階で経験するなんて思ってなかった……!
「……俺も、ごめん。汚した」
そういえば、秋山さんの精液がジーパンと、ちょっとシャツにかかっている。
「いや……別に……」
秋山さんはちょっと待ってて、と言うと、そのまま隣の部屋に消えた。とりあえず拭き取れる分だけ、あと手も。ティッシュで拭いておいた。
セックスって……こんなに気持ちいいんだ。
「はい。これ。」
目の慣れた暗闇の中でソファーに寄りかかってぐったりしていると、すっかり服を着て元のとおりになった秋山さんが何かを差し出した。声が掠れていなかったら、何も無かったみたいだ。
「えっ……」
秋山さんが出していたのは、札束だった。
「160万。無利子無担保で貸す分が150万と、服の分、10万」
「……俺の服、そんな高くないです」
そっか。テストに合格したんだ。途中からすっかり忘れていた。
「いいから。俺の面子を守ると思って」
「……じゃあ」
「よし。じゃあ書類書いてもらおう」
電気をつけてからの秋山さんは、何故か泣きたくなるほど業務的だった。
スカイファイナンスを後にして、路地裏の階段を降りきると、やっぱりさっきのことは全部幻か何かだったのかもしれないと思った。でも、カバンを開けると今までに見たことのない量の札束が入っていて、やっぱり俺は「テスト」をクリアしたんだなとわかる。
明日には忘れていたいんだけど……。無理そうだな。
耳に焼け付いた秋山さんの掠れた声を振り切りながら、俺はどっぷりと暮れた夜の街に混ざっていった。