暗くなったスカイファイナンスの中は、それでも天下一通りから窓に入る光で、充分明るかった。秋山さんはうーん、と唸りながら、ブラインドを下げた。ここで、やるのか。

「隣、座っても?」
「えっ!? あ、はい……ッ」

 こういうAV見たことある。ていうか、風俗行くとこんな感じなんじゃ……はーっ、行っとけば良かった……活かす知識が無い……!
 ただ隣に座っただけの秋山さんに、顔を見ることもできず、ただガチガチに固まってしまう。

「……俺からキスした方がいい?」

 秋山さんの囁き声が近くで聞こえた瞬間、身体の芯が粟立った。この人、本気なんだ。何でこんなに艶のある声をしてるんだろう。かっこいい。ぽやぽやと流れに任せそう、に、なる。

「ちょ、ちょっと、ちょっと待って下さい」
「……何? やめる? 俺は別にいいけど」

 右隣に感じられた体温が、スッと離れた。

「そうじゃなくて。え、えーと、これは俺のテストですよね? ちょっと……待ってください」

 お金のため。お金のためだ。大丈夫。ちょっとおかしくなったと思って明日忘れてしまえば、なんてことは無い。全部なかったことに、、できるできる。できる。

「キスも初めて?」

 ああ、なんだろうこのヘンな感じ。多分風俗のお姉さんが言いそうなことを、秋山さんが言うからだ。

「はじめてです」

 秋山さんが何か言いかけたけど。これは俺のテストだから。腹を決めてそのままキスをした。
 柔らかい。やわ、柔らかい。ここってこんなに柔らかいんだ。思わずふにふにと感触だけ楽しんでいると、ちゅ、と音を鳴らして秋山さんが離れた。……なんだ、今の音。な、なんでちゅって言ったんだ? 恥ずかしくて顔に急に熱が集まったのがわかった。

「……」

 秋山さんは何故か黙っていた。笑われてるのかもしれない。でも、次の瞬間今度は秋山さんからキスされていた。何度も何度も口を離すもんだから、さっき初めて聞いた、音源がよくわからないちゅ、という音が繰り返し聞こえる。これどこから鳴ってるんだ……!?
 柔らかくて、でも時々チクチクするキスをたくさんされて、僕は唸っていたかもしれない。とにかく……口で息ができない。そう。そう思ってた。
 口を、舐められた。開けなさいよ、と言われてるみたいだ。おそるおそる、開ける。

「ンッ……ンンン!?」

 ちょっと開けたらもうダメだった。全部食べられた。秋山さんの舌が俺の舌を絡め取って、吸って、頭が沸騰した。さっきまで秋山さんが吸っていた、煙草の苦い味がした。これ、これは完全に知らない。気持ちいいとかわるいとかじゃなく、自分の腔内が好き勝手されることで、ひたすらフワフワする。特に、上顎を擦られると、腰の辺りがぞくぞくした。……急に、ベシっと頭を叩かれた。

「声。出過ぎ」

 えっ。俺、声なんて出してた!?

「ご、ごめんなさい」

 まあいいけど……ちょっと抑えて。と秋山さん。ホントに? 出てた??

「これじゃどっちが抱くのかわからないな」

 目を伏せたまま、秋山さんが冷めた笑いをした。

「ま、いいや。キスでそんなになってちゃ、リードは見込めないし」

 秋山さんの顔がまた近づいてきて、俺の口を啄んでまたリップ音を立てた。

「それ」
「ん?」
「それ、その音、何でそんなに鳴るんですか? 絶対に鳴る……」
「? ああ、リップ音? ……どこでも鳴るよ?」
「えっ?」

 ほら、と言いながら秋山さんが俺の鼻に、頬に、口に、首に、服の上から肩に、キスをした。

「すげえ、全部鳴った……」
「……まあ、別にキスしなくても鳴るし」
「ええ!?」
「……君、おもしろいって言われない?」

 秋山さんは困った顔で笑うと、また俺の口に噛み付いて上顎を舌で擦った。……うう。これちんちんが気持ちよくなる。と同時に、俺のベルトを外している。カチャカチャと音がして、もう既に勃ち上がっているソコを撫でられる。きもちいい。
 秋山さんはそのまま俺のジーパンのファスナーを下ろすと、パンツ越しにちんこに触った。

「あっ」

 思わず声が出てまた顔が熱くなる。他人に触られたこともなくて、あまりの気持ちよさに腰がガクガク揺れた。秋山さんは、何故かキスを辞めてそこを見ていた。……睫毛、長いな。
 そのままスリスリと撫でるだけだった手付きが、扱くようなものに変わった。ハァハァと息だけ荒げて、身体はひっきりなしにビクついた。ヤバい、気持ちいい。快感を逃がすように仰け反って目をギュッと瞑っていたら、いつの間にか目の前にいた秋山さんがいなくなっていた。……いや、下に顔を寄せていた。とうとうパンツから俺のちんこが取り出される。

「はぁ……あ、秋山さん?」
「ん?」

 下から呑気な声が聞こえる。当然そんな間近で人に見せたことも無いから、恥ずかしくて余計ヒクついた。……俺の、小さいのかな。そんなこと彼女に言われたらその場で泣いてしまいそうだ。男の人だからまだ理解あると思うんだけど。
 そんなことをぼんやり考えていた。次の瞬間、急にちんこが温かくなって、思わず跳ね上がってしまった。

「ンッ」

 下から秋山さんの苦しそうなくぐもった声が聞こえる。……舐めてる。……舐めてる!! 俺の腰が跳ねた衝撃で、秋山さんはより深く咥えてしまったらしい。チラ、と恨めしそうな視線を寄越された。えっ……気持ちいい……!!
 この時点で既に腰が溶けてしまいそうだったのに、秋山さんは俺のを咥えて上下にストロークした。

「あッ、ダメダメ!! イクッ!!」

 ぬるぬるとしたあったかいもので吸われて、一瞬で俺は達した。