グチ、グチと、柏木の穴から善くない音がして、羞恥と快感でのぼせ上がった表情を見つめる。一閃。その下の口はだらしなく息を漏らしているのに、二つの眼は反抗的に真島を射貫いていた。
何処から取り出したか、しかし“彼”の為に購入したであろうディルドを、グリグリと奥に押し付けて笑っている。真島は、ほぼ服を乱していなかった。
「アンタほんまにゴリゴリされんの好きやなあ」
ろくに触られてもいない筈の前がビクリと跳ね、鋭い視線が快楽で歪む。ぐい、とイイところに押し当てても、女の様な嬌声どころか呻くような吐息が溢れるだけだった。
「ア、……は、クソ」
しかし、その視線に、その男の吐息に、意味もわからないほど昂ぶっているのは真島自身である。
「強情やな。……もうええわ、アンタの声が枯れるまで鳴かせたる」
こんな男の抑えたような喘ぎに、興奮するなんて。どこまでも滅茶苦茶にしたくなる。
……と、丸く開いていた柏木の口が、ぐい、と弧を描いた。グイ、と重たくなった下半身に、痛いほどの刺激。
「どっちがだよ」
ベルトも緩めず、スーツの中で押し込められていた真島のモノは、しかししっかりとその形になぞられるほど張り詰めていた。
「、」
真島が動揺を見せたが先か、柏木がガバッと勢いよく起き上がると、ゴチン、と大きな音がした。柏木が頭突きを食らわせたのだ。
息を飲んだままの真島の視界に、チカチカと火花が散る。そのままグラリと傾けば、視界に広がったのは己に跨る柏木の不敵な笑みだった。
「まったく。悪趣味だな、てめえは」
ライトの明るさと頭の痛みで、数回瞬きをしてもまだ視点が定まらない。柏木は得意げに鼻で笑うと、真島のベルトを外し、真島の陰茎を取り出した。己のナカに入ったままのディルドをゴトリ、と引き抜いて落とすと、真島のモノを数回扱いて己の穴に宛てがう。
腰を浮かせたまま、クポクポと、簡単に入るであろう穴の先に小さく真島のモノを出し入れした。
「あッ……か、柏木、」
挿れたくて堪らない。押さえつけられた腰は、中途半端な快感でガクガクと小刻みに震えている。無理に押し上げようとしても、柏木もまた上がって入ることを許されなかった。
しかし、柏木も興奮しきっている。瞳は爛々と、愉悦の色を浮かべて笑っていた。
壊したい。壊しても壊しても壊れない、そんな此奴を壊したい。真島もまた、嬉々としてこの状況を楽しんでいた。
その瞬間。ズン、と柏木が一気に腰を降ろした。
「……ッ!!」
「アァッ……く、」
ディルドで散々柔らかく慣らされたナカは、蕩ける様に熱く真島のモノを締め付ける。強すぎた快感を逃がすように、ガクン、と柏木は背を弓のように撓らせた。
――なんて綺麗なんだ。
いい歳こいたオッサンが、髪を振り乱して俺のちんこで快感に溺れている。言いようのない支配欲が脳みそから背中を駆け抜けて、ナカに入るモノを一際硬くさせた。
わざとなのかどうなのか、柏木のナカはぎゅうぎゅうと畝り、締め付けてくる。搾り取られているかのようだった。
「……ハン、いい気味だ」
お前ヨすぎて困るって顔してるぜ。
その言葉に腹が立ってしまって、真島は下からグリ、と柏木のイイところを押し込んだ。
「……!、ッ」
やっぱり、綺麗だ。
そこからはもう止まらない。止めようと思っても不可能であった。ガツガツと思い切り奥をついてやれば、声を出さないように悶え続ける柏木が苦しそうに呻いた。
「は、は……おい、ンッ!」
話をする余裕もない。ただ、此奴をめちゃくちゃにして、ナカにブチ込みたい。
「ああッ……! ま、真島、」
ぐり、と円を描くように突き上げた瞬間、柏木がとうとう音を上げてガクガクと震えだした。構わず掻き回すと、柏木の先からどろり、と何かがこぼれ落ちる。
「、ぐ……ッ!」
続けてナカがぎゅうぎゅうと真島のモノを締め上げた。何かを搾取するように、痛いほどに吸い付いてくる。構わず真島は何度か強く腰を叩きつけると、柏木のナカへ望みのものを注ぎ込んだ。
§
暫くはぐったりとしていた二人だったが、やがてのそりと起き上がると、柏木は文句を零しながら身支度を始めた。幾分腰を辛そうにしているのに、満足感を抱いてしまう。
二人の襲名式は、数日後である。
「……もうこれっきりにしろ」
帰り際に、柏木が真島にそう伝えた。何方も遊びのつもりではないのに、相手が遊びだと信じこんでいる。……そうでないと、保てない関係だった。
「何言うとんのや。今度から幹部会の後に絶対ヤるからな」
気怠げにソファーに身を沈めたままの真島が吠えた。
「死ね」
後ろも見ずにそう言い放って去っていった柏木に、かわいいなと思ってしまった真島は、己を鼻で笑うしかなかった。