結論から言うと、解さずには無理であった。

 冴島はハナからそのまま入れられるとは思っておらず、谷村を抱えごろん、とソファへ横たえると、足首を一つにまとめそのまま高く上げさせた。

「う、わ」

 まんぐり返しの様な姿勢に思わず驚きの声が漏れる。吊るされた肉のようだな、と何処か冷静に皮肉る自分がいた。パワーで勝てないのは、当たり前のことだ。

「痛かったら言うんやで」

「え? あ、はい」

 了承の声を聞くとすぐに、冴島は谷村の穴に指を沈めた。……流石、呑み込みが良い様だ。一度奥まで入れ、引き抜きながら腹の方を探ってやると、すぐに反応を示し、ナカが柔らかくなったのがわかった。
 結局3本指を入れるまでに至った頃には、谷村は羞恥やら頭に血が上ったやらで、どろどろと溶けながら先走りを垂らしていた。
 足首をまとめていた左手を右側にポーンと投げてやると、谷村はようやっと足をソファの下へ降ろしはぁはぁと辛そうに息をした。

「乗れるか?」

「……乗れます」

 スタミナ足りねえよ……。と小さく呟きながら、まだ達してはいない谷村が苦しそうな顔をする。ソファに座る冴島の上に向かい合ってようやっと跨がると、こちらを見つめる深い色の目と視線がかち合った。

 冴島さんは、一体どんなつもりで俺を抱くんだろう。興味本位だろうか。
 今のところ、感情という感情は読み取れなかった。聞いても、納得の行く回答が返ってくるか、わからない。


「考えごとか。……余裕や、なッ」

「アッ……、ッ!」

 いくら馴らされたと言っても、いきなり入口から奥まで叩きつけられては流石の谷村も思考を一気にぶっ飛ばされた。驚いて目の前の胸板に縋り付いてしまう。
 冴島はそのまま谷村を抱えると、無遠慮に下から突き上げ続けた。

「あ、アア、……さえじま、さ……ッ」

「……」

 谷村にとって唯一の快感の捌け口となってしまった上ずった声が、冴島の嗜虐心を静かに満たしていった。……いや、もともと冴島に嗜虐心など存在しない。ただ、本能として獲物を追い詰めてしまうだけだった。
 思考はわからぬ。それでも「それがしたくてやっている」という意志を感じて、谷村も満足感を味わっていた。――今は存分に鳴かせてもらおう。


「アッ!? いっ……」

 もうすぐ絶頂かというところで冴島が谷村の首筋に噛みついた。気持ちいいという感覚と痛みが混じって、谷村は目の前がちかちかと視力を失ったようになる。

「あっ……、アアアッ! あぁ、あっ、イク、イク……ッ!!」

 冴島は谷村の首筋に噛みついたまま、二人同時に性を放った。















 ――えらい目に遭った。

 谷村は服を着ながら右肩の痛みに呻いた。出血はしていないが、どう動かしてもズキズキと痛むそこは、濃く痣になっているに違いなかった。

「……すまん。無意識やった……」

「ええ? 嘘でしょ? そういう嗜好かと思いましたよ……」

「いや……す、すまん」

 谷村の痣を見て痛そうに顔を歪めているのは冴島も同様であった。この様子だと筋肉の繊維自体も痛めているかもしれない。

「いったぁ……。もう、どうするんですか……警察官は人前で着替えることもあるんですよ」

 絶対に日常生活に支障が出る。
 伊達さんになんて言おうか。


「俺は水辺のインパラじゃないんですから」

「わかっとるわ」

 わかっているが、わかっていない。

「病院代出すで」

「大丈夫です。こんな大きな歯型、医者になんて説明したらいいんですか」

 た、、たしかに。


「あ」

「え?」

「せやけど、酷くされたいんちゃうんか」

「……は?」

「『ヨシくん』は酷くされるんが好きって」

「……」

「……」

 谷村は暫く黙って冴島を睨みつけていたが、やがて溜め息を一つ吐いた。

「そういうことにしておくと楽だからそう言ってるだけですよ。下手くそな責め方されるより痛くされた方が反応しやすいんでね」

「……」

「……すいません。別に今日のはヨかったんでもういいですよ」

「……すまん」

 三度謝罪を重ねる冴島に、谷村は少しねちっこく責めすぎたかな、とぼんやり考えた。






「谷村」

 すっかり服を着終える頃に、冴島が神妙な顔で話し出した。

「お前……自分のことは自分で面倒見られるな」

「……何ですかいきなり」

「質問に答ええ」

「……勿論。俺だって一課の刑事ですよ」

「そやな」

 冴島は一人で納得し、また思考の海へ潜っていったが、谷村の頭上には未だにはてなが浮かんでいた。


「谷村、これ」

 そのまま何かを書きとめかと思うと、冴島はそれを谷村へ渡してきた。

「これ……」

「俺の連絡先や」

「あ……ありがとうございます」

 ――これはつまり。


「もうあの店には行かんやろから、何かあったらこっちに連絡せえ」

「え。もう行かないんですか」

 少し前、店を冴島と共に出る俺を、ミサキがギリギリと凄まじい顔で睨んでいたのを思い出す。
 ざまあみろと思ったが、まさかもう行かなくなってしまうとは。俺まで行きづらくなるな。

「ああ。目的は達成できたからな」

「……?」

「送るで」

 外に向かうよう促された谷村が、その意図に気づくのは彼が家に辿りついた頃だった。









冴島大河
終了条件1「谷村正義」と「再会」する。

谷村正義
終了条件1「冴島大河」の連絡先を入手する。