名前を呼ばれ意識が現実に戻りかけたところで、俺からキスされるとは思っていなかったのか、冴島さんは一瞬戸惑った様子を見せた。

 キスはこうするんですよ。
 優しく上顎を舐め、舌を吸い、唾液を飲ませる。
 俺の唾液を飲んでください。HLA遺伝子の味を覚えて、美味しいと思ってください。きっと美味しいから。――好きです。




 冴島はしばらく谷村のキスにされるがままになっていた。

「冴島さん、俺足攣りそう」

「……あ?」

「そこ座ってください」

 谷村と冴島では身長差が大きかった。そのままぐいぐいと押され冴島はソファに落ち着く。

「たにむら、」

「心配しないでください。大丈夫ですから」

 もう一度触れるのキスをして、谷村は冴島のベルトに手をかけた。慣れた手付きで暴いていく。

 流石に大きい。
 冴島を見ると、急所を顕にされ流石に少々不安なのか、僅かだか眉間を寄せていた。しかし、鈴口には既に透明な液体が浮いていた。谷村が思わずそれを吸うように一度口付けると、冴島のモノはビク、と大きく動いた。
 竿はそれっきり触れないようにし、谷村はタマから舐める。どのくらいの加減がいいのか、冴島の表情を見ながら圧を調整していく。相変わらずこわい顔をしているが、冴島の表情は次第に切なげなものへと変わっていった。何より谷村がチロチロと舐めるたびに冴島のモノは反応し、硬さを増していった。

 谷村は、冴島がもういい加減上も舐めてくれと思うまでそこだけを舐め続けた。冴島が口を開きかけたその瞬間、たっぷりと湛えた唾液を塗りたくりながら下から先っぽへと性急に舐めあげていった。

「、たにむら」

 ニ、と笑って目を細める谷村は、やっていることはこんなに大人なのに、子供の様だと冴島は思った。しかしそんな考えも、ぱくりと先を咥えられ雲散霧消した。

「う、」

 さんざん焦らされたせいか、柔らかく熱い粘膜に包まれ、じゅるじゅると吸われるだけで達してしまいそうになる。さっきまであんなに静かに舐めていたのに、今度は与えられる感覚が強く、冴島の腰は無意識に跳ねていた。

「ンッ、ん……」

 谷村もまた、咥内を犯され喉までガツガツと達する冴島のモノを、嗚咽せぬように、歯を立てぬように舐めるので精一杯だった。行為はフェラチオからすっかりイラマチオへと変わってしまっていた。酸素がうまく吸えず意識が薄くなっていく感覚も、快感になっている。


「たにむ、ら、」

 出そうだ。
 その瞬間、冴島は思いきりそれを引き抜いた。

「わっ……ぷ!」

 そのまま飲む気満々だった谷村は、顔にかかった飛沫に思わず目を瞑ってしまう。

「……すまん」

 ありがたいことに目にはかかっていないようだ。そろそろと目を開ける。


「冴島さん」

 ひどいじゃないですか。

 そう睨みつける谷村も、射精後の高揚感に包まれる冴島も、すっかり息が上がり、室内には二人の呼吸音だけが聞こえていた。

「お前……ええ顔しとるな」

 暫く谷村の顔を見つめていた冴島が、やっと動きティッシュを取りながらそう呟いた。

「はあ? 今更気づいたんですか」

 ――俺ずっとこの顔なんですけど。
 申し訳無さそうに手を伸ばす冴島からティッシュを受け取り、谷村は愚痴る。口元にかかったものをそっと舐めると、苦味で舌がジンジンした。
 鏡も何もないからわからないが、おそらく拭き取れただろう。

 さて、と。
 ちら、と冴島のモノを見ると、射精したにも関わらずほぼ萎えていなかった。

「えーと……」

「脱げや」

「あー……。はい」

 そう言い服を脱ぎ始めたが、よく考えれば谷村は「そういう目的で出会った人以外とする」のは実に久しぶりのことであった。自分の口淫でイッてくれたのは嬉しいし、自分のナカも冴島の大きなモノが欲しいとキュンキュン疼いているが……どこか緊張しておかしな感じがしてしまうのも仕方のないことだった。

 変に出し惜しむと逆に恥ずかしくなる気がして、勢いよくすべての服を脱ぐと、地下だからか、少しひんやりとした空気に身震いをした。
 見遣ると、冴島もとっくに服を脱ぎ捨てていた。……後ろ解さずに、入るかな。