「こんにちは、お姉さん」
「こんにちは。また会えたね」
ひらり。手を振りながら挨拶をしたのは、わたしの食べ歩き友達の男の子だ。名前は知らない。突然連絡先も知らない。いつも偶然出会って一緒に何かを食べて解散するだけの不思議なお友達。
かっこいい子だけど中学校の制服を着てるからあんまり仲良しな顔すると変質者に思われちゃうかも、と思ったりもするのだけれど。気付いたらこうして会話をするのが当たり前になっているのだから不思議である。
でも、やっぱりお互いに名乗ったりはしない。代わりに、手に持っていたコンビニの袋を彼は興味深そうに見て、好奇心に瞳を輝かせた。
「ところで、その手に持っているのは、もしや……」
「ふふ……気付くとはさすがだね。そう。最近一部界隈でだけ有名な、コンビニ限定の豆腐スイーツ!」
じゃじゃーん!と取り出したのは、今話題のコンビニスイーツ。見た目はスイーツというより健康食というか、カニカマとかそっち系だけど。確かにスイーツ!とSNSでバズっていたものだ。
絶対にこの子もチェックしてると思ったし、好きだと思った。当たってちょっと嬉しい。
「まさか……! よく買えましたね。行くたびに見て回っているんですけど、なかなか置いてなくて」
「こういうのはどうしても置いてあるお店自体が限定されちゃうもんね……」
いくら話題でも、置いてくれない店舗は置いてくれない。わたしも職場の最寄りでは売ってなくて、ちょっと泣きながら探したのだ。
でも、よかった。見つかった時に彼に会えて。わたしはにこにこと笑ったまま、どうぞ、と彼に一本差し出した。
「はい、どうぞ」
「いいんですか?」
「もちろん。会えるかもしれないなーと思って二つ買ったし」
「会えなかったら?」
「おいしく両方食べました」
ただ、できるなら一緒に食べたいなと思ったから。ぜひとももらってほしい、と言えば、男の子はそっと目を細めて、ありがとうございます、と受け取ってくれる。
よかった。なんとも不思議な関係だけど、こうして一緒に何かを食べられるのは嬉しいし、好きなのだ。
ぺりぺりと袋を開けて、ぱくり。もぐもぐ。味わって、ごくり。
しっかりと最初の一口を並んで味わった後、わたしたちはどちらともなく顔を見合わせて苦笑した。
「……なんとも不思議な味わいですね。豆腐と言えば豆腐。チョコレートと言えばチョコレート……」
「なんかそれぞれの本来の味わからなくなってきたかも」
美味しいのは間違い無いからいいか、と。そうからからと笑って、あそこのコンビニ買えたよとか、代わりにちょっと珍しい新商品の話なんかをしながら、今日も不思議で、でも素敵な時間を過ごすのだった。