「この辺りはオゼットに似ていますね」
レアバードを出せる程度に広い場所まで移動するために、のんびりとイセリア裏の山道を歩く。
きょろきょろと辺りをうかがっていたプレセアちゃんが、興味深そうにつぶやいたのはその時だ。少し懐かしい感じがします、とやんわり頬を緩めた彼女に、ロイドも嬉しそうにうなずく。
「ああ。森に囲まれてるからな」
「ですが、やっぱり違いますね。特に、木の感じが……切り心地が違いそうです」
「すごい木こり目線だね。いや、木こりだから当然なんだろうけど……」
てっきり木々の密集具合が違って光の差し方が違うとか、木の種類が違うとか、そういう違いをあげると思ったのだけれど。
でも、急に斧を持って振るように素振りを始めた彼女は、わりと楽しそうだ。これも一種の職業病なのかな。
「やっぱり、木によって切るときの感覚って違うのか?」
「違います。神木が特にそうですが、切るときの力の入れ方、刃が通りやすい角度……種類によって密度も違います。ここの木は……気持ち良く切れそうです」
どこかうっとりと頬を赤らめる彼女は、本当に以前より表情が出るようになったと思う。それを実感するのが、木が気持ち良く切れそう、という話題の時なのもどうかと思うけれど。お父さんから引き継ぐ形になった木こりの仕事、誇りをもって好んでおこなっているのだということがわかって、たぶんいい話だ。
スパスパ切れそうなのは、ここの木の方はあちらに比べて育成が悪いからだろうなとか、そういう話題はたぶん、水を差すことになるので黙っておく。
「す、すごいなあ、プレセアは。しかも、それを目的地まで運ばないといけないし、加工もできるし。なんでもできるんだね」
「木こり、ですから……」
「木こりって加工品作れることも必須なの?」
「加工や彫刻自体は以前からやっていましたから……手に職があると、稼ぎも違います」
「さ、さっすがプレセア!」
「待って」
プレセアちゃんが何をしても褒めるモードに入ったジーニアスに苦笑していると、不意にコレットが立ち止まる。
真剣な様子で耳を澄ませる彼女に、とりあえず体調が悪くなったわけではなさそうだと安心して息をひそめた。
「向こうで何か……ささやくような声がする」
指さした森の奥の方は、当然だけれど人が通るような道ではない。村とは正反対だし、牧場とも違う方向だ。
そんなところ、迷子になった人でもなければ通らないのだけれど……彼女の耳は、わたしたちよりずっとよく聞こえる。何かがいるのは間違いないだろう。
「……誰かいるのかな」
「行き倒れてる人でもいるのかもしれない。見てみよう」